年金生活者への一律5000円給付は、年金の仕組みの「ルール違反」だPhoto:PIXTA

 3月の半ば頃から、年金受給者に対して1人当たり5000円を給付するという話が浮かび上がった。当初はスムーズに進むかと思われたこの案も、与野党からさまざまな意見が噴出し、現状はどのようになるかはまだわからない。世論からは概してあまり評判がよくないようで、共同通信社による電話世論調査では、今回の5000円の支給について「適切だとは思わない」が66.0%だった。言わば3分の2が反対をしている。

 ただ、反対という意見が「給付が必要ではない」というのか、それとも「5000円では少ないので適切だと思わない」のかはよくわからない。

 そこで、筆者が出演するラジオ番組を通じてアンケートを取ってみた。(1)必要だし金額も適切だ、(2)必要だが金額はもっと増やすべきだ、そして(3)給付は不要である―という項目で聞いてみたところ、「(3)給付が不要である」が80%を超えたので、この策はあまり受け入れられていないように思える。

 もっとも、このアンケートは番組のTwitterで取ったものなので、ひょっとしたら高齢の年金受給者自体の声はあまり反映されていない可能性がある。それを割り引いて考えると、前述の66%の反対というのが現実的な数字かもしれない。

「一律給付」が好ましくない理由は
単にバラマキだからではない

 反対に対する理由の多くは「バラマキだから」、そして「高齢者の票目当ての選挙対策だ」という声が多いようだ。野党の批判もこの点に集中しているように思える。たしかにバラマキという指摘はそうかもしれないし、選挙対策かどうかは何ともいえない。

 だが、筆者は少なくともこの二つの理由ではなく、別な理由で今回の給付はあまり好ましいことではないと考えている。それは、ひと言で言えば「ルール違反」になるからだ。その理由をお話ししよう。