学校側は、クラス内の成年者と未成年者が差を感じづらい環境づくりを意識する必要があるだろう。

 ただし、高校3年生のクラスに成人となった生徒が出てくることで事務的な変更点はある。たとえば、成人となった生徒には保護者の同意書が不要になったり、プリントの「保護者」の表記を「保護者であった者も含む」や「父母等」などに変えたりする必要があるのだ。

「生徒の生活面でどのような問題が生まれるかは予測しきれない部分もあります。生徒の事情や成熟度は各学校によってさまざま。今回の変更を機に自立心が芽生える生徒もいる一方で、トラブルに発展するケースも考えられます」

親の同意なしで
退学することも可能に

 実際に成年年齢が引き下げられることによって、どのような問題が懸念されるのか。

「成人した生徒が決めた進路には、保護者の同意が必須ではなくなるので、親に内緒で大学進学を希望したり、退学したりする生徒も出てくるでしょう。法解釈にもよりますが、生徒が退学を申し出た場合、『親の同意がない』という理由だけで退学を許可しないことは難しくなります。反対に、学校側が成人した生徒に退学を勧告したとき、生徒がその場で承諾してしまうと、後で親が学校に文句を言ってもそれを覆すのは難しくなります」

 文科省が発表する「『成年年齢に達した生徒に係る在学中の手続等に関する留意事項について』に関するQ&A」では、生徒の退学に関して「事前に高等学校等、生徒及び父母等との間で話し合いの場を設けるなど、その父母等の理解を得ることが重要」と記述されている。

 だが、神内氏によれば、そもそも独断で進路を決める生徒は親との関係が良好でないケースが多く、協議は現実的に難しいという。