エネルギーと食料を他国に依存、輸入止まれば生活大混乱

 ご存じのように、日本の一次エネルギー自給率は12.1%(2019年)でOECD(経済協力開発機構)加盟の36カ国中35位と、エネルギーが自給できていない。

 そんな中で周辺国と軍事衝突をすれば当然、石油などの海上輸入ルートも影響を受ける。

 一方で、戦争には石油をはじめとした膨大なエネルギーを必要とする。必然的に「銃後」への供給は後回しになって、国民は深刻な電力不足などに陥る恐れがあるのだ。

 というと、「だからこそ原発再稼働だ!」と叫ぶ人も多いが、今回の戦争でもわかるように、エネルギー施設というのは一番に標的になってしまう。しかも、今の時代はわざわざそこにミサイルを撃ち込まなくてもいい。

 米中露のサイバー戦争を研究しているジャーナリストの山田敏弘氏の「ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する」(文藝春秋)によれば、既に原子力発電所などのインフラ施設を内部から破壊するサイバー攻撃も可能だという。

 そんな危機的状況にさらに追い討ちをかけるのが、食糧難である。こちらも有名な話だが、日本のカロリーベースの食料自給率は37%(2020年度)で、エネルギー同様に他国と比べるとかなり脆弱だ。ちょっと前の「アサリ」のように国産をふれまわっていても、実は海外から輸入したものを国内で“産地ロンダリング”をするケースもあるので、実際はもっと自給率は低いかもしれない。

 エネルギーの輸入が難しくなるように、食料の輸入が難しくなれば、外国産食品に支えられている日本人の食料事情はすぐに悪化してしまう。そしてこの事態を悪化させるのが「中国依存」である。

 農林水産省の農林水産物輸出入概況(2021年)によれば、日本が最も食料を輸入しているのはアメリカで1兆8681億円で18.4%を占めているのだが、次は中国で1兆3214億円で13%を占めている。

 よくネットやSNSで日中関係が悪化するたびに「中国と国交断絶せよ!」と威勢よく叫ぶ人たちがいるが、本当にそれをやってしまったら庶民の生活は大混乱に陥るのだ。

 というと、「経済安全保障も法制化されたし、他国からの食料輸入を増やせばいいだけの話だ」と大したことがないように言う人もいるが、依存をしているのは食料だけではない。