ロシアもウクライナも
勝者にはなれない

 2月24日に始まったロシアとウクライナの戦争だが、この先、どちらが優勢になろうとも、両国ともに勝者とはなり得ない。

 ロシアは、仮にドンバス地方のドネツク、ルハンシク両州を押さえ、「ロシア系住民を守る」という大義名分を成就させたとしても、国際社会では半永久的に「悪玉」のレッテルを貼られる。多くの戦死者を出し、想定以上の経済制裁を受け、1日当たり3兆円ともいわれる戦費と相まって、国内経済は相当疲弊することが予想される。

 こうした戦いに備え、巨額の準備金を確保していたとしても、国民生活への影響は計り知れない。

 一方、ウクライナも勝者にはなり得ない。ゼレンスキーが2019年の大統領選挙で公約の一つに掲げてきた北大西洋条約機構(NATO)への加盟は実現しなかった。

 NATOの規約(第5条)には、「1つ以上の締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する武力攻撃とみなし、その結果、そのような武力攻撃が発生した場合は、各締約国が国連憲章第51条によって認められた個別的または集団的自衛権を行使する」とある。

 すなわち、ウクライナが単体でロシアと戦う状況というのは、これに該当しないのだ。

 侵攻を受けて申請したEUへの加盟も、EUのフォン・デア・ライエン委員長らの肝いりで手続きが加速化したとしても、「戦争の完全停止」「汚職の撲滅」「経済の安定」といった諸条件がクリアされる日はそう近くない。

 南東部の要衝、マリウポリや、第2の都市ハルキウ(ハリコフ)など、ロシア軍の攻撃が激しかった地域では街が廃虚と化し、その復興には時間とコストがかかる。