高騰するガソリン価格を抑えるための石油元売りへの補助金制度について、5月以降も継続される方針だ。数千億円もの税金を投じる政策の効果は出ているのか。石油流通が専門の著者は、「世界の石油覇権が大きく変化したことが、ガソリン高止まりの真の要因であり、ただ価格を抑制するだけの政策は限界だ」と指摘する。(桃山学院大学教授 小嶌正稔)
地政学リスクの要因がなくとも
原油高止まりはあまり変わらない
ガソリン価格が高止まりし、国は矢継ぎ早に対策を行っている。最近、ガソリン流通が専門の筆者に聞かれることは、「対策の効果は出ているのでしょうか」と「ガソリン価格は下がりますか」の二つである。
対策の効果が、「目先の価格を抑えること」だとすれば、効果は出ている。ガソリン価格は下がるのかについては、そもそも政策によって抑えている価格は、市場原理を無視している以上、抑えるのか・抑えないのかの話であり、下がるかどうかの話ではない。
ならば、IEA(国際エネルギー機関)加盟国で協調し、石油の備蓄を放出(日本が「国家備蓄」を放出するのは初)した効果はどうかといえば、短期的には好影響をもたらすが、根本的には解決していない。
ロシアによるウクライナへの侵攻、サウジアラビアの隣国ヨルダンの武装勢力の攻撃など、地政学リスクがエネルギー危機に拍車をかけているが、実はこれらの要因がなくとも、原油の高止まりの状況はあまり変わらない。
真の要因は構造的なことである。しかし、現在は戦禍によるエネルギー危機に目が向きがちで、あまり語られていない。そこで次ページからは、この構造的要因について、複数の数字データを交えて詳しく解説する。