1. 環境目標に対するコミット

 前回も取り上げましたが、例えばEUが2035年にガソリン車の新車販売を事実上禁止し、日本政府が2030年度に温暖化ガス排出を2013年度比で46%減らすとの方針を発表するなど、各国が環境目標を大幅に引き上げています。今後もこのような政府主導の「規制」によって、EVシフトが後押しされる可能性は大いにあるでしょう。

2. 航続距離、電費、充電拠点の改善

 私がテスラを手放した理由の一つがまさにこれで、国内のEV充電拠点はまだまだ少なく、充電に時間がかかります。しかし、これらの課題は今後飛躍的に改善していくものと思われます。

 第一に、バッテリー技術は日進月歩で進化しており、例えば報道によると、パナソニックは航続距離を従来型よりも2割ほど長くする新型リチウムイオン電池を開発し、その量産準備を進めているようです。また、EV充電拠点については、日本政府が「2030年までにEV向け急速充電器を3万基設置する」との目標を掲げ、インフラ整備を後押ししていますし、先日ポルシェジャパンとアウディジャパンが急速充電器の相互利用を発表するなど、メーカー各社が充電拠点のオープン化を進めることで、ユーザーにとっての利便性が飛躍的に高まる可能性があります。需要面では、前述の通り、地方を中心に軽自動車タイプのEVが普及する可能性が大いにあると感じています。このように、技術進化、需要喚起、それに伴うインフラ整備の掛け算で、EVの普及が一気に加速するのではないかと期待しています。

3. 車中体験の進化

 本連載ではあまり触れませんでしたが、これからはモビリティに占めるソフトウェアの役割が大きくなり、車そのものが「アプリケーション(機能の集合体)」としての側面を持つようになるでしょう。そして、様々な機能の中でも、クルマという空間をどのように定義し、何をして過ごすのかといった「車中体験」は重要な位置を占めると思います。

 仕事場として、エンターテインメントを楽しむ場として、あるいは家でも職場でもないサードプレイスとして等、ユーザーのニーズに合わせた車中体験の提案が求められるでしょう。例えばボルボが2018年に発表したコンセプトカー「360c」は、車内をオフィス空間やベッドルームとして利用するシーンを提案していたり、LG電子が2022年のCESで発表したコンセプトカー「LG OMNIPOD」は、壁面ディスプレイやXR技術を組み合わせて、テレビ会議やフィットネスができるといった新しい車中体験を提案しています。