いくら企業が対策をしても
不適切発言はゼロにはできない

 2番目の問題提起は「おじさんが幹部にいる限り、こういった問題はなくならない」という考えです。そもそもこの問題、おじさんを問題にすること自体ジェンダー問題だという別の論点にもつながります。これも検討すべき点ではありますが、この記事では「現実の日本社会では女性蔑視発言をするのは、ほぼおじさんだ」という前提でスルーさせていただきます。

 ここでの問題は、「いくら研修をしてもこういったおじさんはゼロにはならない」ということです。ゼロにならないからには毎回処分をし続けるしかないのです。たとえはどんどん悪くなりますが、これはいじめをゼロにする問題や交通事故死をゼロにする問題と同じです。

 学校でのいじめ問題は、以前は文部省の方針で「学校にはいじめによる自殺は存在しない」ことになっていました。そのため、いじめによる自殺があったと報告しようとする校長を組織的に抑え込んでは、“いじめゼロ”にする都道府県ばかりでした。学校のいじめが減り始めたのは文科省がその方針を変えてからですが、ゼロには遠いというのが現実です。

 たとえゼロにならないとしても、なくす努力が重要です。交通事故死もなくならないのはわかっているけれども、それがなるべく少なくなるようにルールを周知させ、免許更新のたびに研修を徹底するというのが現在の方針です。それでも無謀運転はなくならないのと同じで、大企業の幹部による不適切発言は今後もなくならないでしょう。

 でも、今回わかったことは「おじさん幹部の不適切な行動ひとつで、株主が壊滅的なダメージを受ける」ということです。減らす努力は当然するとして、一度起きたらどうしようもない状態になるのだとしたらどうすればいいのか?が大問題です。

 たとえば社内の監視システムを構築して、あぶないおじさん幹部をあぶりだして部長以上には昇進させないとか、部長以上になってしまっている場合には早めに左遷すべきなのかどうか? そしてこういった対策に企業が踏み込むべきなのかどうかというのが2番目の問題です。

 ここまでの二つの問題は、「とはいえ、企業としては取り組む以外にない」というのが過半数の意見なのだと思います。