首脳陣も予想外だった偉業達成
米メディアも佐々木に注目

 つまり、日本だけでなくアメリカをも驚かせた完全試合はある意味で望外であり、首脳陣の予想をはるかに上回るペースで佐々木がポテンシャルを開放させている証しでもある。

「佐々木の実力はわかっていたので、いずれものすごいことをすると思っていたが、3年目の春に完全試合を達成するとは思いませんでした。彼の、成長のスピードには驚かされます」

 オリックス戦後にブログへこうつづり、さらに「今後の活躍が、めっちゃ楽しみです」と期待を込めた吉井氏をしても、快投が日本ハム戦でも継続されるとは考えてもいなかったはずだ。

 日本ハム戦後の世論も、時間の経過と共に井口監督の“英断”を支持する声が多数を占めるようになった。批判が向けられているのは、首脳陣よりも佐々木を援護できなかった打線となっている。

 次回は、中6日で24日にオリックスの本拠地、京セラドーム大阪の先発マウンドに上がる予定だ。雪辱に燃える昨シーズンのリーグ王者との再戦には、継続中のさまざまな記録もかかってくる。

 日本ハム戦で8回を投げ終えた時点で「17」に伸びている連続イニング無安打は、1948年に真田重蔵(大陽)がマークした16回を実に74年ぶりに塗り替えている。

 3日の西武戦の8回二死で岸潤一郎から空振り三振を奪って以来、オリックス戦、そして日本ハム戦と、現時点で打者52人を連続してアウトに仕留めている。これは2014年にユスメリオ・ペティット(ジャイアンツ)が作ったメジャー最長記録の「46」を既に更新している。

 4度の先発登板で全て2桁を数える奪三振数は、セ・リーグを含めて断トツの「56」に到達。日本プロ野球の歴史で過去に開幕から4試合以上の連続2桁奪三振を記録したのは、91年の野茂英雄(近鉄・6試合)、10年のダルビッシュ(日本ハム・5試合)の2人しかいない。

 ここまで投じた392球のほとんどを、最速164km/hの直球と140km/h台後半の高速フォークが占めている。それでもプロの猛者たちは剛速球に振り遅れ、フォークには腰砕けになる。直近の2試合で3ボールになったのも3度だけと、コントロールを乱して崩れるそぶりも見せない。

 年齢的にも佐々木はすぐに海を渡らないと断りを入れた上で、アメリカのCBSスポーツ電子版は、来年3月に開催予定の次回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)をこう位置付けた。

「ササキは明らかに最高の投手の一人。MLBファンが彼を見る最高の機会は来春になるだろう」

 日本ハム戦ではチケット完売、満員札止めとなり、テレビ東京が急きょ地上波とBSで生中継した。フィーバーの渦中にいる至宝は日米両球界を引きつけ、登板する度にとてつもないことを演じるかもしれないという期待感を漂わせながら、現在進行形で成長を遂げていく。