視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。
グラミー賞を逃すものの
圧巻のステージを魅せたBTS
現地時間2022年4月3日に米国ラスベガスで開催された第64回グラミー賞授賞式。最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞にはドージャ・キャットfeat.シザ「Kiss Me More」が輝き、同部門に2年連続ノミネートされ受賞が有力視されていた韓国の男性7人組のポップグループBTS(防弾少年団)は、残念ながら逃した。しかし、授賞式ステージでの圧巻のパフォーマンスは世界のファンを魅了し、改めてこのグループの勢いを印象づけることになった。
2013年に韓国でデビューし、たちまち同国内で熱狂的に支持されたBTSは、2017年頃から着実に世界進出の駒を進めていった。2020年に「Dynamite」で韓国人アーティストとして初めて米国のビルボードのHOT100(シングル)で1位を獲得。非英語圏のアーティストでは1963年の坂本九の「SUKIYAKI(上を向いて歩こう)」以来57年ぶりの快挙だった。その後も同チャートでBTSは何度も首位に立っており、2021年11月にはアメリカン・ミュージック・アワード2021にて、大賞に当たる最優秀アーティスト賞を含む3冠を達成している。
以前から不思議でならなかった。価値観や審美眼が違い、日本や韓国のようなアイドル文化が存在しない欧米の音楽市場で、典型的なK-POPボーイズグループであるBTSが、なぜこれほどまでに熱狂的な支持を得られているのか。日本の個性的なアーティストたちが狙ってきた椅子に、デビューから短期間で座ることができたのか。