今年3月、山盛りの麺と野菜で有名な「ラーメン二郎」のドキュメンタリー番組が放送された。元々「二郎」は、メディアの取材を拒否することで有名だった。なぜ「二郎」がマスコミ嫌いになったのか、そしてなぜ今回は取材に応じたのか。その理由を探りつつ、「二郎」をめぐる数々の都市伝説を検証していこう。(講演・研修セミナー講師、マーケティング・コンサルタント 新山勝利)
「二郎はラーメンではなく、『二郎』という食べ物」
客の心をわしづかみにする魅力を探る
ラーメン二郎の最大の特徴は、スープに豚(豚骨・豚ガラ・背脂・豚肉〈その後切り分けられて厚切りチャーシューとなる〉)と香味野菜で極限までうま味を引き出していることにある。そのため、スープに脂が溶け込み白濁するほど乳化する。
その濃いエキスに負けず劣らず、麺も他に類を見ない。二郎の麺は、ゴワゴワで極太の“ワシワシ硬麺”なのだ。それをつなぐのがカエシ(スープで割るタレのこと)だ。今ではFZ醤油(二郎専用の調味料であるアミノ酸入りのしょうゆダレ)がカエシとなっている。
そして、厚切りのブタ(チャーシューのことを指す)がどんぶりに鎮座、さらには山盛りの野菜(多めのもやしに少しのキャベツ)が天高くそびえる。「二郎はラーメンではなく、二郎という食べ物である」と言われる所以(ゆえん)だ。
ラーメン二郎のドキュメンタリーが放送
取材拒否を貫く店がなぜ?
今年3月、テレビ番組のNONFIX『ラーメン二郎という奇跡 ~総帥・山田拓美の“遺言”~』が、フジテレビで深夜に放映された(関東ローカル)。
番組の告知サイトでは、こう書かれている。
「絶大な人気を誇りながらも、かたくなに取材拒否を貫いてきたラーメン店『ラーメン二郎』と、創業者である山田拓美氏の実像に迫るドキュメンタリーをお届けする!」
ラーメン二郎は取材拒否の飲食店としても有名だ。告知サイトにもこんな記載がある。
「今回、『ラーメン二郎』の創業者であり、“総帥”という呼び名でファンからも愛され続けている山田拓美氏が、2019年2月に慶応義塾大学から特選塾員に選任されたことを記念し、山田氏の人柄と功績を形に残すことを目的として、特別に番組が制作されることとなった。よって、『ラーメン二郎』は、今後も取材については従来通りお断りするという」
だが番組では、ラーメン二郎が取材拒否をする理由については、語られなかった。また同番組内では、新聞や雑誌の取材掲載面や、NHKの取材映像が流れていた。つまりかつては取材を受けていて、途中から拒否に転じたことになる。
実は、筆者は今から30年近く前、取材拒否の場面に立ち会ったことがある。当時筆者は、ジロリアン(ラーメン二郎に通う熱狂的な中毒者のこと)の一人であった。慶応大学(東京都港区三田)前にある二郎の三田本店で食事中に、店内の階段脇にある黒電話が鳴ったのだ。