4月26日、首相官邸に入る、韓国次期大統領の尹錫悦が派遣した「政策協議代表団」。中央は団長で国会副議長の鄭鎮碩4月26日、首相官邸に入る、韓国次期大統領の尹錫悦が派遣した「政策協議代表団」。中央は団長で国会副議長の鄭鎮碩 Photo:JIJI

 大型連休が明けると、隣国韓国に新しい大統領が誕生する。尹錫悦。就任式は5月10日。尹は冷え切った日韓関係の改善に意欲を示す。そのため連休前には国会副議長の鄭鎮碩を団長とする政策協議代表団を日本に送り込んできた。焦点は首相の岸田文雄と面会ができるかどうかにあった。事前にソウルで韓国側と調整してきた日韓親善協会中央会会長の河村建夫は韓国側にこう伝えている。

「来日してみないと誰と会えるのか分からない」

 しかし、終わってみれば日本側の“満額回答”だった。来日初日の4月25日には外相の林芳正、経済産業相の萩生田光一、防衛相の岸信夫と立て続けに会談した。林とは夕食まで共にした。さらに超党派の日韓議員連盟会長の額賀福志郎に加え、元自民党幹事長の二階俊博ら二階派幹部と帝国ホテルで面会した。二階は一貫して日韓関係の発展に尽力してきた実力政治家。韓国側も一目置く。二階は失脚した朴槿恵に代わって大統領になった文在寅の就任直後に当時の首相、安倍晋三の親書を持って大統領府(青瓦台)を訪ねた。

 この日面会した二階派のメンバーは二階らしい人選だった。その中に元首相中曽根康弘の孫の中曽根康隆がいた。1982年11月に首相に就任した中曽根康弘は、翌年1月、電撃的に韓国を訪問した。この中曽根訪韓で冷え切った日韓関係は一気に改善に向かった。二階派幹部は「おじいさんの思いを(康隆に)伝える狙いがあった」と語る。この場で二階は鄭に繰り返し訴えた。

「いいときはもちろん悪いときも行き来することが大切だ」