美しい物を使う

 第一回のセッションのテーマは、「経年(エイジング)美化」。細尾の織物と、開化堂の茶筒の工房を見学し、経年により価値が失われるのではなく、むしろ味が出て質が高まる工芸品に触れることで、「美」の概念を捉え直しました。

 化粧品の世界では、赤ちゃんの肌が最高で、いかに若さを保つかという価値観が重視されています。それに対して、「エイジングの美」というものもあることを探る試みでした。

美の型を知る

大手化粧品メーカーが実施する、美意識を磨くトレーニングポーラ「美を紡ぐ」の研修風景

 建仁寺の両足院というお寺で、座禅を組んで感受性を開く体験も行ないました。「座禅」と聞いて想像するような「心を無にする」イメージよりも、座禅を組むなかで普段自分の中でシャットアウトしていた鳥の声が聞こえてきたり、自然の世界と自分が一体であるということに気づく、調和を重視した「型」のトレーニングでした。

 さらに和菓子の「塩芳軒(しおよしけん)」では、感覚の伝え方や捉え方、さらには和菓子の「銘」の付け方について考えました。桜の季節のお菓子に「桜」という銘を付けるのは野暮です。形が抽象的であっても、そこにピンクがあることで桜だとわかる、そういう伝え方もある。自然の美を取り入れる「型」を学びました。

美を体験する

 ある回のセッションのテーマは「テクスチャー」でした。京都の懐石料理店「木山」を会場に、三種類の水(水道水、井戸水、硬水のミネラルウォーター)と、二種類の出汁(かつおだし、こんぶだし)の掛け合わせで、どのようなテクスチャーの変化が生まれるかを考察しました。最後にはそれぞれで仕上げた料理を味わって違いを体感するというものでした。