今回の取材中、マニラの街で会う人会う人に誰を支持するか聞いて回ったが、ホテルのスタッフ、生活困窮者やタクシーの運転手はほとんどボンボン支持で、シンボルマークのVサインを笑顔で見せてきたり、キャンペーンカラーの赤のTシャツを着ていたりとフィーバー感があった。

熱狂するフィリピンの若者たち。シンボルマークのVサインをする人、キャンペーンカラーの赤が目立つ Photo by T.M熱狂するフィリピンの若者たち。シンボルマークのVサインをする人、キャンペーンカラーの赤が目立つ Photo by T.M

 ボンボン氏に敗れたレニー・ロブレド副大統領は人権派弁護士として知られ、麻薬戦争を批判し、親中路線の修正を訴えるなどドゥテルテ大統領と真っ向から対立した経緯があった。リベラル派のインテリの支持を集めたが、広がりに欠いた。

今後、民主主義と権威主義のハイブリッド体制へ移行する?

 今後、新政権はどのようなものになるのだろうか。

 独裁が復活するのか?国内外のフィリピン専門家に聞いてみると、ドゥテルテ大統領の手法を見ても、戒厳令を必要としないだろうとの意見が圧倒的だった。独裁者マルコスを生んだことの反省から現憲法が権力を強く縛っているという背景もある。

 選挙結果が出る前に筆者の取材に応じた政治学者のリチャード・ヘイドリアン氏はこのように警戒を強めていた。

「フィリピンは、政治学者が言うところの(民主主義と権威主義の)ハイブリッド体制に移行、もしくは後退する可能性があると思います。選挙は行われるだろうし、表現の自由や政党間の競争もある程度はあるでしょう。しかし、トルコやハンガリーで見られたように、比較的若く、権威主義的で非自由主義的な指導者はさまざまな制度を『植民地化』し、チェック・アンド・バランス(抑制均衡)を無効にさせました。フィリピンでも、現在の傾向が続けば、そして特にボンボン氏が大差で勝利すれば、そのような状況になる可能性が非常に高いと思います」

 また、日本で言うところの「神輿は軽い方がいい」なのか、次期政権は実姉のアイミー・マルコス上院議員に影響をされるという見方や、「実質的にサラが牛耳るのでは」(石山氏)との見方まである。