「主な要因は二つあります。ひとつは業務を割り振るタイミングのわかりにくさです。オフィスで働いていた頃は、プロジェクトメンバーの顔色や様子から忙しさを察し、業務を割り振る面もありました。しかし、リモートワークでは部下の顔が見えないので状況がわからず、割り振ることが難しくなっているのです」

 そのほか、オフィスでひと声かければ依頼できたような小さな業務も割り振るのが難しい状況になっているという。“今、手が空いているメンバー”が見えなくなってしまったのだ。

「WEBミーティングを使えば相手の顔が見えますが、一人の状況を確認するために15~30分の時間を抑えなければなりません。その日すでに相手の予定が埋まっていれば、ミーティングは後日になり、業務のアサインも後ろ倒しに。その結果、機会損失が発生するなど、生産性が低下するリスクもあります」

 もうひとつの要因は「コミュニケーションコスト」にあるという。コミュニケーションコストとは、チームへの情報伝達や意思疎通にかかる時間や労力を指す。

「コロナ禍以降、メールやビジネス用のメッセージアプリを活用している企業も多いですよね。たしかにチャットならリアルタイムで連絡できますが、テキスト化する際に言葉の意図やニュアンスを伝える難しさがあります。たとえば『はい、わかりました!』と書き込むとポジティブに捉えられますが『はい、わかりました。』と書くと、冷たい印象を受けます。そのため、言葉のニュアンスを正しく伝えるための文章を考える時間が増えているんです」

 部下は上司に対し、どの程度カジュアルに連絡すればいいのかわからず、一方、上司は部下に対し、パワハラにならないように気を使って文面を考える。互いに頭を抱え、本題よりも文章の表現に悩む時間や労力が“コスト”になるという。

「さらに、リモート環境下での中間管理職は、業務の割り振りを含めたマネジメントに加え、現場管理者として、部下の勤怠の集計・報告などの労務面での把握が今まで以上に困難になっています。中間管理職のマネジメントの負荷が高まった結果、本来もっとも重視しなければならない部下とのコミュニケーションがおざなりになっているケースもありますね」