週休3日制導入を表明する企業が現れ始めた。導入時に重要になってくるのが働き方を含めた人事管理である。これまでのあり方を大きく変える導火線となる公算は大きい。(昭和女子大学現代ビジネス研究所特命教授 八代尚宏)
週給3日制を導入する
理由は何か
選択的週休3日制が政府の経済財政諮問会議で提言され、また主要な企業が本格的な導入を検討と報道されている。この場合に、週あたりの休日が1日増える分の労働時間の削減をどう調整するかが大きな争点となる。
機械的に計算すれば、週4日の労働時間が、各2時間だけ延長されなければならないが、それではワーク・ライフ・バランスに逆行する。他方で、週ベースの給与を2割カットされれば、家計にとって大きな負担となり、現実に選択する社員は多くないという見方もある。
しかし、ここでより重要なことは、単に現行の週休日が1日増えるだけではなく、週のうち、何曜日に休むかを、社員が個々に選択できるという自由度の高まりである。これはベルが鳴ると、全員が一斉に働き、一斉に休む工場の流れ作業のような働き方を暗黙の前提とした、現行の雇用慣行の骨格を揺るがすものとなる。
他方、就業規則等の変更なしでも、多くの社員が、毎年、使い残している有給休暇を週ごとに分割して使えば、その範囲内で、一定期間を週休3日で働くことは、すでに十分に可能である。しかし、それが現実に容易でないことは、平日には社員がほとんど休まないことを暗黙の前提とした人事管理が行われているためだ。
このため、仮に、選択的週休3日制が部分的にでも導入されれば、多くの社員が平日に休むことになるという新しい状況に、管理職が直面しなければならない。これにどう対処するかが大きな課題となる。
そもそも、なぜ週に3日も休日が必要なのだろうか。毎日、残業を続け、休日も出勤することを生きがいとするミドルシニアにとっては、およそ理解しがたいことであろう。それは、社員を怠けさせるのではなく、今後の会社にとって必要な人材を集めるためといえる。
次ページから3日制が必要となる背景を明らかにするとともに、これまでの人事管理を変える導火線となる理由をひもといていく。