5月に、有名人の「いのちの電話」関係訃報が増える理由

 5月は、気温や気圧の変化の影響を受けて、双極性障害(一般にそううつ病として知られる)を患う人の「そう転」が起こりやすい時期なのである。うつからそうへの切り替わりだ。双極性障害では、それまでのうつ期の押しつぶされそうな苦しみからそう期へと転じたときの「解放感」や「万能感」から、理屈を超越して衝動的な行動に及んでしまうリスクの高さが指摘されている。

 精神保健福祉士資格を持ち、福祉施設や少年院などさまざまな現場で精神疾患と闘いながら社会復帰を模索する人々をサポートしてきたベテランのAさんは、まさに「いのちの電話」で希死念慮や不安を持つ人々からの電話を受け続け、寄り添った長い経験を踏まえて、こう話す。

「人間は皆、脳に個性があり、だから性格や能力に個性が生まれます。精神医療とは、皆それぞれ個性的な脳の中で、周囲や自分自身と葛藤を起こしてしまう部分を扱い、サポートするものなのです。自覚や診断のあるなしにかかわらず、芸能界など人前で常にキラキラと笑い、ハイテンションで演じる業界には、もともと双極性障害II型といって、そうとうつを繰り返す病気を抱えている人が一定数いらっしゃるんです。全くの別人に見えるほど重度のそうとうつを繰り返す、人目にも明らかなI型とは異なり、II型は軽そうといってそう状態が軽度なので、表現する仕事、タレントや俳優という職業にものすごい適性を現す人がいる。もちろん、それは表現者としての才能でもありますが、本人はとても苦しいのです」