5月はそう転の季節

 その「そう転」が、気温や日照などの条件が重なり、5月にやってくるケースが多いのだという。世間の定説通り、季節の変わり目になると人間の脳や精神は自然界から多大な影響を受け、大きな変化を迎えるものなのだ。

 では「そう転」とは逆に、「うつ転」の季節には問題は起きないのだろうか。Aさんは説明する。

「うつに転じるときは、活動量が低下しておとなしくなりますから、本人がぐっと落ち込んでお酒の量が増えたり、室内に閉じこもったりなどしても、衝動的に何かしてしまうなどの影響は少ないのです」

 Aさんは、こうも指摘する。

「テレビなどで俳優さんやタレントさんを見ていると、私たちのような精神医療の世界の人間からは『あ、この人には○○の傾向があるかもしれない』『○○の症状が出ているな』と感じることも多いです。最近は、日本や海外の有名な起業家と呼ばれる人たちにも感じることがあります。スポットライトの下やカメラの前で素敵な笑顔を見せ続けたり、ばくちのような経営判断を繰り返したりということは、普通の精神の人間には困難なことなんです。ですが、本人がそれとうまく共生して表現活動に成功しているなら『才能』なんですよ」

 人とは違う才能には、その理由がある。我々のような平凡な人間とは異なり、際立って輝くことのできる人々は、その活躍を説明するに足る理由を抱えて闘っているのかもしれず、それゆえに「異才」と呼ばれるのだろう。才能と闘い、亡くなった方々が安らかな眠りにつかれるよう、心からお祈りする。