2023年5月、いわゆる「ゼロゼロ融資」の利払いが一斉に始まる。利払いに行き詰まり、返済を滞らせてしまう企業が多出すれば、焦げ付きの穴埋めは国民負担で行うしかない。そんな最悪の事態を見据え、国が中小企業政策の路線変更にかじを切っている。その具体的な施策と、国の機関や金融関係者による、中小企業支援のあるべき姿について追った。(共同通信編集委員 橋本卓典)
ゼロゼロ融資の利払い開始日が迫る!
返済不能企業が多出すれば国民負担は不可避
“Xデー”は1年後――。
2023年5月、いわゆる「ゼロゼロ融資」の利払いが一斉に始まる。ゼロゼロ融資とは、新型コロナウイルスの感染拡大で苦しむ中小企業の資金繰りを支援するために国が打ち出した、実質無利子・無担保の保証付き融資のことだ。
ゼロゼロ融資は、元金の支払いは最大5年間、猶予される。だが、実質無利子となるのは最大3年間のため、来春にも利払いが始まるわけだ。
これまで国はコロナ禍の中、「返済不問の資金供給と返済猶予(リスケジュール)」を優先させてきた。ゼロゼロ融資も、利用時に返済計画を示す必要がない。コロナ前と比べて売上高が一定程度、減少していることを証明するだけで、融資を受けることができた。
つまり、平時であれば決して出さない「赤字補填(ほてん)資金」をあえて出すことで中小企業の資金繰りを支え、企業倒産を食い止めていたということだ。
もっとも、ゼロゼロ融資を利用して念のために借り入れを行い、手元資金を厚くした企業も少なくない。こうした余力のある企業は、利払い開始前に早期返済するだけだ。
問題は、3年間の実質無利子期間の終了とともにに利払いに行き詰まり、返済を滞らせてしまう余力のない企業である。筆者の地域金融機関への取材の感触では、利払い不能に陥りそうな企業の割合は、コロナ禍対応のため借り入れを行った企業全体の2割程度だ。
ゼロゼロ融資は、企業が返済不能に陥ると、信用保証協会が金融機関に代位弁済する仕組みになっている。ゼロゼロ融資の保証債務残高は実に40兆円超。代位返済が大量に発生して信用保証協会が対応し切れなければ、その穴埋めは最終的に国民負担で行うこととなる。
この先、“制度破綻”を起こすことなく中小企業の支援を継続的に続けていくためには、どうすればいいのか。次ページでは、多数の貸し倒れが発生するという最悪の事態を見据え、中小企業政策の路線変更にかじを切った国の取り組みを追う。また、国の機関や金融関係者による、中小企業支援のあるべき姿についても論じていきたい。