健康保険証を持たずに受診しても
後から療養費の請求ができる

 前述のように、健康保険を使って医療を受ける場合は、医療機関で健康保険証を提示することで、窓口で支払うお金は医療費の1~3割で済むようになっている。ただし、健康保険法の第87条では、「保険者がやむを得ないものと認めるときは、療養の給付等に代えて、療養費を支給することができる」と定めている。

 この「やむを得ない事情」の筆頭に挙げられるのが、旅行中など、健康保険証を持っていないときに、病気やケガの治療を受けた場合だ。こうしたケースでは、いったん医療機関の窓口では医療費の全額を支払うことになるが、加入している健康保険組合に「療養費」の申請をすると、患者が立て替えた医療費の一部を後から給付してもらえるのだ。

 給付してもらえる金額は、患者が立て替えた医療費から、本来の自己負担分を差し引いた金額だ。例えば、55歳で3割負担の人が、旅先で健康保険証を持たずに医療機関を受診して、医療費全額が3万円だった場合は、申請すると本来の自己負担分の9000円を差し引いた、2万1000円が払い戻される。

 ただし、対象になるのは、健康保険が適用されている治療だ。入院時の差額ベッド料や先進医療費など、もともと健康保険が適用されていない治療は、療養費の対象にはならない。

 申請には、医療機関から発行された領収書や診療明細書などが必要になるので、提出するまで大切に保管しておこう。

 また、旅先で子どもが病気やケガをした場合は、療養費の申請のほかに、子どもの「医療費助成制度」の払い戻し手続きも忘れないようにしたい。

 現在、子どもの医療費については、全国すべての市町村で、「乳幼児医療福祉費支給制度(マル乳)」「子ども医療費助成制度(マル子)」などの助成制度を設けている。対象年齢や助成額は自治体の財政力によって異なるが、子どもが一定の年齢になるまでは、本来なら患者が支払う一部負担金を、都道府県と市区町村が代わり支払ってくれる制度だ。