それは千葉県の新浦安で、液状化がひどく、埋め立て地のリスクを顕在化させた。以前は千葉県で最も資産性の高い湾岸エリアの代表的な町だったが、その後の取引価格は首都圏平均と比較しても上昇幅が小さく、さえない。湾岸エリアは東日本大震災後の3年間、取引件数が激減したが、「人のうわさも75日」で、3年経過すると人は忘れ、今では液状化などのリスクを気にする人はほぼいなくなっている。

 とはいえ、湾岸エリアの利回りは高い。つまり、賃料に比較して売買価格が安い。これは湾岸の家を購入するのはリスクがあることを意味している。賃貸ならすぐに引っ越すことができるが、持ち家の売買は取引量が激減し、売るに売れない時代もあったからこそ、そのリスクが価格の割安度に出ているのである。震災後、売却を3年待つ余裕がある人なら、湾岸エリアはお買い得になるし、そうではない人には高い買い物になると考えよう。

 ちなみに、震災後に人が増えたのは世田谷区や杉並区だが、震災前に移転した前住所もこれらの区が最も多くなっている。

 震災後の価格変動については誤解されていることが多い。取引が停滞した湾岸エリアでさえ、価格が下落したわけではない。また、被災地・仙台市の賃料は、2014年時点で震災前に比べて2割上がっている。津波によってストックが減少したところに、震災被害のないエリアへの移転需要が拡大した結果、需給がひっ迫し、家賃が大幅上昇したのだ。

 同様にして、売買される不動産価格も上昇した。単純に地盤のいいところに引っ越す人が増えるからだ。また、東日本大震災後の鉄道の間引き運転や計画停電は、単身者を中心に職住近接になる傾向を促した。