「地震が怖いから家は買わない」というリスク回避論をよく聞く。自宅を購入した直後に地震が来て家が壊れ、住宅ローンが残る――という情景が目に浮かぶのだろう。東日本大震災直後はこのような心理状況になった人の割合が高まった。弊社が運営している「住まいサーフィン」では、消費者の住宅購入マインドを四半期ごとに調査しているが、震災後の調査で「地震が怖いから買い控える」というコメントが多数あった。

 だが、当時も今も同じ主張をあえてさせていただく。「買わない選択」はリスクヘッジではなく、家賃を払うというリスクを確定させるだけだ。ここで大事なことは、震災による倒壊を免れた物件は資産価値が高まったという事実だ。持ち家は地盤と構造が安全であれば資産になるのである。

 東京都は、地震に対する地域危険度や液状化予測図を提供している。これに標高図を組み合わせれば、地震・火災・津波・河川の氾濫に強い場所を選ぶことができる。湾岸エリアの利回りに見たように、こうした地盤のいいエリアは保険料が乗っており、価格は高くても安心なのだ。

物件選びの専門家が緊急提言!
分譲マンションのPML値公表義務化を

 不動産はJリート(日本版不動産投資信託)を通じて証券化(株化)されており、レジデンス(住宅)も格好の投資対象になっている。リートは物件購入に際しては、エンジニアリングレポートという建物に対する調査報告書を求める。その中で、PML(予想最大損失)値というデータは地震の際の損失率を指す。PML値の正確な定義は、475年に一度起こるとされる大地震(=50年間に起こる可能性が10%の大地震)が発生した場合の予想最大損失率だ。計算式は次のようになる。

PML値(%)=(被害総額÷建物の再調達価格)×100

 0%は被害なし、100%は全損と考えると分かりやすい。通常、リートは15%以下の物件のみを取得対象とする。建物価格が10億円の場合、10%なら1億円で元通りということだ。基本的に、リートは地震に弱い旧耐震物件は購入対象にしない。

 最後に、建物の対策も決めておこう。災害の可能性が高い立地に住むのであれば、戸建てなら、50cmでもいいから盛り土をしよう。そして、最大約6mの高さが想定されている津波や高潮の水位を考慮し、マンションは3階以上を選ぼう。災害はお金より命の大切さを教えてくれる。優先順位は常に「命」である。