巡回距離は1日10キロ
ダイエットに最適な仕事

 警備員のルーティンワークは「立哨(りっしょう)・動哨(どうしょう)」「監視」「出入管理」「巡回」の繰り返しです。筆者が勤務していた高層ビルでは、毎日4人の警備員が決められたタイムスケジュールに沿って、これらの業務を行っていました。

「立哨」とは、エントランスなどで「休めの姿勢」で立っている、アレです。出勤者にあいさつをしたり、不審者がやって来ないかチェックしたりします。「動哨」は、それを歩きながらすること。不審者や不審物を探し回る散歩みたいなものです。ルートは決まっておらず、敷地内のどこを歩いてもOKです。

「監視」はその名の通り、防犯カメラの映像を眺めたり、火災報知器などの警報に対応したりする業務です。「出入管理」はビルの入館者の受け付けや、落とし物の管理などをします。

「巡回」とは、「放置物品」「施錠チェック」「騒音」「破損」といった各種チェック項目に異常がないか確認しながら、決められたルートを歩く仕事です。ルートが決まっていて、チェック項目が多く、歩く距離が長いのが動哨との違いです。

 私のいた現場は巨大な高層マンモスビルで、ビルの外にも敷地があり、遊歩道や公園、関連施設が広がっていました。警備員時代の私は、ビルの中や敷地内の全エリアを25時間勤務中に何度も巡回しました。深夜も早朝も巡回しました。

 あまりに巡回をしていたので、私は入社時に75キロあった体重が、入社後2カ月で65キロまで落ちました。出勤日の歩数を歩数計で調べてみたことがあるのですが、1日1万5000歩も歩いていました。距離に換算すると、10キロを超える歩数です。

 余談ですが、William Tigbe博士という英ウォーリック大学の研究者がスコットランドのグラスゴーで行った研究によると、1日1万5000歩以上歩く人はメタボリックシンドロームの兆候が一切なく、心疾患になるリスクも低いそうです。まさに巡回は、最強のダイエット法です。長生きしたけりゃ巡回をしてください。

警報が鳴る緊張感…
精神的負担は大きい

 巡回や立哨・動哨しているときに、防災センターで監視業務をしている警備員から、PHSで連絡が来ることがあります。テナントドアや自動ドア、エスカレーターやエレベーターなどに何らかの異常があり、防災センターの警報が鳴ったため、確認してほしいという依頼です。

 警報が鳴った場合は、即座に現場確認が必要です。現場確認の急先鋒が、巡回などで敷地内を歩き回っている警備員となります。監視業務についている警備員がサッカーでいうところの「司令塔」だとすれば、現場確認に向かう警備員は、その指示に従ってフィールド上を動き回る「ストライカー」といった具合でしょうか。

 防災センターでは、さまざまな警報が四六時中鳴っています。テナントの扉は遠隔管理されており、ドアが開きっぱなしになっていたり、きちんと施錠されていなかったりすると、それだけで防災センターに警報が鳴ります。そのたびに巡回中の「ストライカー」は現場に駆けつけ、現場の状況を「司令塔」に報告します。

 ほとんどの場合、大きな問題はありませんが、時折「本当にヤバイ警報」が鳴るので、警備員は常に神経を研ぎ澄ませておかなければなりません。