立ち食いそばある立ち食いそばチェーンでは、ゆでたそばが切れて、次の提供までに時間がかかるとき、「5分ほど、お待ちいただけますか?」とは言わないそうです。何と伝えているのでしょうか?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

行動経済学で注目の「ナッジ」ってご存じですか?オランダの空港で、男子用トイレの小便器に「ハエ」の絵を描いたところ、清掃費が80%も減ったという話があります。利用者がハエに狙いを定めたため、トイレの床を汚す人が激減したのです。こうしたちょっとした工夫で、人の行動をうながす手法のことを「ナッジ」(nudge)といいます。「ナッジ」とは、「肘でチョンと押す」という意味で、近年、行動経済学の概念として注目を集め、その提唱者はノーベル経済学賞を受賞しています。人をナッジするには、いろいろな手法がありますが、「言葉」が最有力の手段であることは間違いありません。『言いたいことを、人を動かす“ことば”に変える すごい言い換え700語』(青春出版社)は、きつい言い方を柔らかく、幼稚な言い方を大人っぽく、普通の言い方を魅力的な言葉に言い換える方法をレッスンする一冊。同じ内容であっても、“伝え方”が変われば、結果は大きく変わります。ここでは、とくに「ナッジ」の手法を取り入れた“破壊力”抜群のフレーズを選りすぐって紹介します。

「奥へお詰めください」ではなぜだめか

 それでは、具体的なケースで考えてみましょう。

 たとえば、次の二つのフレーズ、どちらの方が人を誘導できるでしょう?

1「奥へお詰めください」
2「奥の方が空いていますので、そのままお進みください」