自民党最大派閥である安倍派の政治資金パーティーであいさつする元首相の安倍晋三自民党最大派閥である安倍派の政治資金パーティーであいさつする元首相の安倍晋三 Photo:JIJI

 元首相の安倍晋三の活字が新聞の政治面に載らない日はない。とりわけここ約1カ月間の安倍の言動はますます激しさを増す。

「米国が核の報復をする確証を相手が持たないと抑止力にならない。具体的な手順を決めることが大切だ」(5月6日、BSフジ番組)

「日銀は政府の子会社だ」(5月10日、大分市での会合)

「防衛費の増額は国債で対応していけばいい」(5月23日、都内の会合)

「(防衛費は)6兆円後半から7兆円が見えるぐらいが相当な額ではないか。(対GDP比)2%確保は当然だ」(5月26日、派閥会合)

「(防衛費は)しっかりした目安を明示し、国家意思を示すべきだ」(6月2日、派閥会合)

 一連の安倍発言の特徴は防衛費と財政に集中していることだ。中でも安倍は、政権担当時の金看板だったアベノミクスに対する強い思い入れがある。そのことが安倍の言動に反映されているようだ。

 確かに党内にはアベノミクスの総括論が根強く存在する。

「アベノミクスは最も重要な成長戦略がなかった。経済が弱いまま金利を上げることも下げることもできずに物価だけが上がり、生活困窮者が増えている」(非主流派の閣僚経験者)

 財政再建派の自民党幹部もそのことに触れる。

「党内で財政健全化の話をすると、安倍さんに近い議員から一斉に反論が出る。アベノミクスには指一本触れるな、という雰囲気だ」

 現に「骨太の方針」を巡る党内調整は侃侃諤諤、議論百出。6月7日の閣議決定前日の6日にようやく決着した。財政再建を巡っては安倍内閣時代の2018年に基礎的財政収支(プライマリーバランス)の「25年度の黒字化目標」を決定している。

 党内にはこの目標を維持するかどうかで二つの組織が生まれた。