マレリの場合も同様だ。世界の自動車部品業界は、大きな構造改革により、生き残りへ向けた厳しい時代を迎えており、ティア2、ティア3だけでなくメガサプライヤーも含めて、試練の局面に立たされている。

 元々、旧カルソニックカンセイは日産の“部品御三家”の一つに数えられた主力サプライヤーであったし、日産のカルロス・ゴーン元会長も一連の“系列切り”の一方で、逆に2005年に日産が出資を41.9%に引き上げて連結子会社としたほどの企業だった。

 しかし、日産の業績が陰りを見せ始めていた17年に、同社は旧カルソニックカンセイの持ち分をKKRに売却してしまう。さらにKKR主導でFCAの部品部門を約7200億円で19年に買収・統合して「マレリ」に社名変更した経緯がある。

 当時FCAは、仏のルノーのライバルである仏グループPSAとの統合を進める過程で、部品部門の売却意向があった。カルソニックカンセイとの統合は渡りに船だったのだろう。なお、FCAとPSAの方は、21年1月に統合を完了させ「ステランティス」が誕生している。

 親会社のKKRは、旧マレリ統合によるスケールメリットを狙ったのだろうが、むしろ買収費用が巨額の債務となって負担になり、そこにコロナ禍や半導体不足などの世界的な自動車減産が追い打ちをかけた。主要取引先である日産が業績不振で、生産台数が減少したことも大きい。

 また、旧マレリとの統合後も、ライティング、エレクトロニクス、パワートレインなどの製品群が加わったものの、同社の高コスト体質からの脱却や大規模リストラが遅れているといった問題点が指摘されている。