なお、筆者自身は個人向けのアドバイスを自分のビジネスにすることに向いていないだろうと自己評価している。当面はアドバイスの元ネタを考えることの方に注力したい。

お金の助言をビジネスにできる
「運転免許並み」のアドバイス資格を提案

 前述のような「助言したくてもできない」という状況を踏まえて、投資顧問業よりも範囲が限定されたアドバイザーの資格を作ることを提案したい。多くの国民が金融資産を有効活用するための「お手伝い」について、報酬をもらって行うことができるようにするためだ。

 資格の略称を「マネー・アシスタント」(MA)としておこう。以下のような内容でどうだろうか。

(1)MAは顧客に、金融全般や関係する制度に対する知識や相談の提供、手続きの手伝い、「限定された範囲」(詳細は後述)での資産運用のアドバイスを業として行うことができる。例えば、顧客にNISAやiDeCoについて説明したり、投資口座の開設の手伝いをしたり、金融機関に同行したり、限定された運用アドバイスを提供したりして、報酬をもらうことができる。

(2)MA資格の取得のためには、既定のコマ数の講習を受けて簡単なテストに合格すればいい。イメージは自動車の普通運転免許の学科試験を簡単にした程度のものだ。取得が難しい資格にはしない方がいい。「お金について分かっている」と自認する人が気楽に取得できる資格にしたい。理屈上、証券外務員資格よりもずっと易しい内容でいいはずだ。

(3)MA資格は2年ごとに更新を要する。更新には2コマ程度の講習の受講が必要となる。資格の更新には講座の受講だけでいい。例えば、金融に関する新しい状況と知識の確認と、法令の確認や顧客とのトラブル事例の説明、などがあるといいだろう。ここでも、筆者にとっては自動車の運転免許がモデルだ(例えば、調理師など他の資格がよりモデルにふさわしい可能性はあるが)。

(4)MA資格の保有者は、金融庁にMA登録を行うことによって、MAを業として行うことができるようになる。ただしMA業は、金融商品・保険などの取り扱いと兼業できない。金融機関の職員はMA資格を取ることができるが、MA業を行うことができるのは退職後だ。また、MAが商品紹介の謝礼・手数料のキックバックなどを金融機関から受け取ることは禁止行為とする。

(5)MA業の登録者は、金融庁のホームページで公表される。MAと取引した顧客は、違反事例(もしあれば)の報告やMAの業務に対する満足度の評価を金融庁に送ることができる。報告者の本人確認はマイナンバーで行う。違反や評価の情報は金融庁が適切に管理し、必要と認める場合は資格の停止、警告、評価の発表(優良業者も要注意業者も)などを行う。ビジネスを行うMAは顧客に評価され、金融庁に管理・監督される。