「社内プレゼン」は、ビジネスパーソンにとって必須のスキルです。どんなによいアイデアがあっても、組織的な「GOサイン」を得なければ一歩も前に進めることができません。そのためには、説得力のあるプレゼンによって決裁者を説得する技術が不可欠なのです。
そこで役立つのが、ソフトバンク在籍時に孫正義氏から「一発OK」を何度も勝ち取り、独立後、1000社を超える企業で採用された前田鎌利氏の著書『完全版 社内プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)です。
本書では、孫正義氏をはじめ超一流の経営者を相手に培ってきた「プレゼン資料」の作成ノウハウを、スライド実例を豊富に掲載しながら手取り足取り教えてくれます。読者からは「大事なプレゼンでOKを勝ち取ることができた」「プレゼンに対する苦手意識を克服できた」「効果的なプレゼン資料を短時間で作れるようになった」といった声が多数寄せられています。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、「一発OK」が取れるプレゼン資料をつくるために、自分の作った資料に”ツッコミ”を入れる重要性について解説します。
決裁者のあらゆる「疑問」に応える
社内プレゼンで「GOサイン」を得るためには、アペンディックス(別添資料)を充実させておくことが重要です。
本編スライドは、提案内容の骨太なロジックをシンプルに表現したもの。枝葉の部分は、あえて削ぎ落とすことによって、決裁者にわかりやすく伝えるのが社内プレゼンの鉄則です。
ただし、削ぎ落とした要素は、アペンディックスとして必ず保持します。本編スライドでは提案の骨子だけを伝えているわけですから、決裁者や参加者にとっては、「確認したい点」や「補足説明を求めたい点」などが出てくるのが当然。その問いかけに適切に応えられるように、本編から落としたデータや補足データなどはすべてアペンディックスとして資料化し、いつでも取り出せるように準備しておくことが大切なのです。
アペンディックスの数に上限はない
ここで重要なのは、アペンディックスに「抜け漏れ」がないように万全を期すことです。アペンディックスの役割は、決裁者の疑問に答えることにありますから、考えうる限りのありとあらゆる疑問に答えられるように準備する必要があります。
私は、社内プレゼンの本編スライドは「5~9枚」に収めることをお薦めしていますが、アペンディックスに数の上限はありません。30枚あっても100枚あっても構わないのです。むしろ、「これだけあれば絶対に大丈夫」という絶対的なラインがないために、どんなに準備をしても安心しきれないとも言えます。
決裁者の目線でスライドに「ツッコミ」を入れる
では、アペンディックスを完璧に近づけるためには、どうすればいいのでしょうか?
本編スライドを徹底的に「疑い」ながら検証することです。「ここについて、疑問が出るかもしれない」「ここの詳細をただされるかもしれない」などと、自分で本編スライドにツッコミを入れるのです。そして、そのツッコミに応えられるようにアペンディックスを用意していきます。いわば、「想定FAQ」をつくっていくわけです。
心がけていただきたいのは、決裁者の目線で本編スライドを見つめることです。決裁者は、常に「なぜ?」という疑問をもちながらスライドを見ています。その「なぜ?」を意識しながら、スライドを詳細に検証していくのです。
決裁者の「疑問」に先回りする
たとえば、本編に下図のようなスライドがあったとします。
自社とライバル会社のシェアの推移を示したうえで、C社から離脱したユーザーを取り込んでいることが、B社のシェア急拡大の要因であることを説明しているわけです。
ここで想定されるツッコミは、「なぜ、当社はC社からのシェアを奪えないのか?(なぜ、B社だけがシェアを奪っているのか?)」といったことです。
そこで、上図のようなアペンディックスを用意することによって、その根拠を明示できれば、決裁者は納得してくれる可能性が高いでしょう。
グラフの「異常値」を見逃さない
しかし、私ならば、これだけでは不十分だと考えます。
上図のB社の折れ線グラフをよく見てください。9月ごろにユーザーが急増しているのがわかりますよね? おそらく目ざとい決裁者であれば、この「異常値」を見逃しません。「なぜ、9月にB社が急増してるんだ?」というツッコミに対する備えをしておくべきなのです(下図参照)。
もしも、ここで明確に答えられれば、決裁者は「相当深く検討したうえで、このプレゼンをやっているんだな」と信頼感と安心感をもってくれるはずです。GOサインへ大きく前進できるに違いありません。
あるいは、下図をご覧ください。
これは、携帯電話を販売している会社が、ライバル会社よりも「新規契約」の比率が少ないことを示す本編スライドです。「新規契約」を増やす施策を打つべきだ、ということを訴えたいわけです。
ここでは、「過去の推移はどうか?」などといったツッコミが予測されますから、それに対応するアペンディックス①を用意します。私ならば、さらに「比率ではなく、実数だとどちらが多いか?」といったツッコミを予測して、アペンディックス②を用意するでしょう。
このように、ありとあらゆるツッコミを予測して、それに備えてアペンディックスを1つひとつ積み上げていく。これが、採択率を高める鉄則なのです。
上司や先輩にも「ツッコミ」を入れてもらう
ただし、自分ひとりだけでは必ず「抜け漏れ」が生じます。
だから、必ず、上司や先輩など、あなたより経験豊富な人にツッコミを入れてもらうことをおすすめします。ここでいうツッコミとは、「質問」のこと。プレゼン資料の内容について、「疑問点」があればそれを質問してもらうのです。
プライドが傷つけられると考えるためか、自分の作った資料にツッコミを入れられるのを嫌がる人もいますが、それはもったいない。事前にツッコミを入れてもらうことで、資料をブラッシュアップすることこそ、仕事で結果を出す秘訣。「できる人」は、そういう認識でいるものです。
それで、アペンディックスに「抜け漏れ」がなくなってくれば、自分のなかでプレゼンに対する自信が芽生えてくるのが実感できるはずです。この自信を感じられるようになれば、アペンディックスが完成したことのサインと言ってもいいでしょう。
(本稿は、『完全版 社内プレゼンの資料作成術』より一部を抜粋・編集したものです)