金融DX大戦#13Photo:DNY59/gettyimages

生命保険業界は金融の中で最もデジタルトランスフォーメーション(DX)が進んでいない業界だ。時代の要請でもあるDXがなぜ進まないのか。その背景を探ると、DXを進めたくても進められない生保の「超レガシーシステム問題」を巡るジレンマとリスクが浮かび上がってきた。特集『金融DX大戦』(全22回)の#13で、生保業界DXの深層に迫った。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)

DX大戦の喧騒をよそに
切迫感のない生保業界

「生保のITシステムは“戦略的塩漬け”」――。

 大手生命保険会社のITシステムやデジタル戦略を担う担当者、ITコンサルティング会社の間では、生保のITシステムの現状について、こう自虐的に表現される。

 今、金融業界は猫もしゃくしもDXだ。銀行や証券会社、損害保険会社は、保有する個人や企業の膨大な決済データや顧客情報を、AI(人工知能)など最新のテクノロジーを活用して、新たな金融サービスに結び付けようと模索している。

 どの社も、できるだけ早く旧来のITシステムをクラウド化したり、オープン系技術を組み合わせたりして、最新のテクノロジーを取り込もうと躍起だ。中には、顧客の契約管理をする基幹システムを、そっくりクラウド化する金融機関も現れている。

 いかにDXでビジネスモデルを変革し、ライバルを出し抜けるかが経営の最大のテーマとなっている。その様はまさしく「DX大戦」だ。

 ところが生保業界は、大戦の喧騒とは一線を画し、どこか牧歌的な空気が流れている。生保各社は中期経営計画の中でDXへの取り組みを推進するとは言うものの、銀行など他の金融機関と比べると、切迫感はない。

 そうしたDXに対する生保業界と他の金融機関との認識の差や、遅々としてDXが進まない焦燥感や危機感を、「戦略的塩漬け」という自虐も込めた言葉で覆い隠しているのだろう。

 なぜ生保業界ではDXが盛り上がらないのか――。次ページで、生保業界が苛まれる呪縛と、その呪縛を解こうとする動きに迫った。