金融DX大戦#12Photo by Kazutoshi Sumitomo

東京きらぼしフィナンシャルグループ(FG)は2022年、デジタルバンク「UI銀行」のサービス提供を開始した。東京きらぼしFGは、なぜ手間をかけてまでわざわざ新たな銀行を立ち上げたのか。特集『金融DX大戦』(全22回)の#12では、グループ全体の経営資源の再配分など、東京きらぼしFGがUI銀行を通して行おうとしている低効率体質からの脱却施策について、UI銀行の田中俊和社長に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 新井美江子)

「3行合併」が立ち上げの後押しに
東京きらぼしのデジタルバンク設立背景

――日頃から疑問に思っていたのですが、そもそもデジタルバンクをつくる必要って本当にあるのでしょうか。銀行を新たにつくるとなると手間もかかるし、収益化も簡単ではないですよね。

 なるほど(笑)。まずはUI銀行を立ち上げた背景からお話ししますね。

 きっかけは東京都民銀行、八千代銀行、新銀行東京の3行を合併してきらぼし銀行を発足させた2018年前後に、「10年後の銀行はどうなっているのだろう、合併後の銀行はどうあるべきなのか」という議論をしたことでした。

 そこで、銀行ビジネス全体を再構築する必要があるという話になったのです。スマートフォンの普及率がさらに上がり、スマホが年代を問わず使われるようになれば、金融サービスの提供チャネルは、リアル店舗からますますデジタルに置き換わっていくだろうと。

 DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が急務になったのは言うまでもありません。ですが、だからといってなぜ、きらぼし銀行とは別の新たな銀行をつくる必要があったのか。

 それは、ものすごい勢いで変わっていく世の中のニーズに合わせて新しい取り組みを行うためには、きらぼし銀行とは切り離された別動隊として動いた方がいいとの判断からでした。別組織なら、実験的な取り組みも含め、スピーディーに物事を進めやすい。

 例えばシステムです。新しい商品やサービスをトライアルアンドエラーを重ねながら提供していくためには、柔軟で拡張性があるクラウドシステムの利用が不可欠です。しかし、きらぼし銀行の大きなシステムをクラウド化しようとすると、5年、10年単位の仕事になり、コストと時間がかなりかかる。ならば新銀行で新しいシステムを取り入れた方が、得策です。

 特にきらぼし銀行は3行合併を機にシステム統合も行いました。この統合が20年までかかったのですが、その間はシステムを大きく変更できないことが分かっていた。じゃあ、仕方がないといって何もしなくていいのかというと、そうではありませんよね。

2022年1月にデジタルバンク「UI銀行」のサービスを開始した東京きらぼしフィナンシャルグループ(FG)。その新銀行の大きな特徴の一つは、新韓金融グループ(韓国)が開発したクラウドシステムを採用したことにある。

銀行の“心臓部”であるシステムに、邦銀で採用実績のない外銀製を使用するという決断は、地方銀行業界を驚かせた。東京きらぼしFGがそうまでしてデジタルバンクを設立したのは、やり遂げたい明確な「グループ改革」があったからだという。UI銀行の田中社長が、その詳細について語った。