金融DX大戦#16Photo by Masato Kato

証券業界2位で、全社員にデジタル教育を行うと表明した大和証券グループ本社。既存の社員のデジタルリテラシーを底上げしつつ、初任給40万円以上で高度な専門性を持つ人材の採用も強化する。特集『金融DX大戦』(全22回)の#16では、デジタル戦略の責任者である板屋篤執行役員に、今後の狙いと証券ビジネスの将来像を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

契約関連でペーパーレス化を推進
データ駆動型の営業支援もまもなく実現へ

――主にリテール(個人)営業部門でのDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めてきました。これまでの成果と今後の見通しについて教えてください。

 リテール営業のDXの取り組みは、大きく分けて二つあると思っています。一つは業務プロセスのデジタル化、もう一つは「データ駆動型ビジネス」へのビジネスモデルの変化です。

 まずは業務プロセスのデジタル化についてお話しします。弊社は全国で約4000人の営業員がいます。日々、お客さまへのコンサルティング(営業)活動をしていますが、1日の仕事の3割程度が、営業に付随する事務作業でした。

 そこで、DXO(デジタルトランスフォーメーションオペレーティングシステム)、つまり事務作業のデジタル化を進めました。

 例えば、お客さまに新しく口座をつくっていただいたときや、投資信託を買っていただいたときにお渡しする目論見書など、営業現場では紙のやりとりが多くあり、お客さまに書き込んでいただいた書類のチェックなどの作業に時間と人手を費やしていました。

 これらの業務の8割程度を紙ではなく端末への入力に変更し、チェックと登録をシステム内で完了する仕組みに変えました。これにより、営業員がより本来の営業活動に使える時間が増えました。

 二つ目の「データ駆動型のビジネスモデルへの変化」ですが、弊社にはお客さまに関するもの、マーケット、営業員の活動記録などあらゆるデータがあります。これらを分析し、お客さまの投資や、商品の提案内容の支援などに活用していこうと考えています。これらの仕組みは現在開発中ですが、もうすぐ実行フェーズに入っていく。

――「データ駆動型のビジネスモデルへの変化」が実現すると、AI(人工知能)による商品提案や投資のロボアドバイザーが活用されるといった光景が想像されます。だとすると、従来の対面の営業員は必要なのでしょうか?

証券業界の個人営業の現場では、顧客の資産残高よりも会社側の手数料収入を優先して商品を売買させる「回転売買」が長年の悪習だった。現在は、顧客の資産残高を増加させて、その一定程度を収益とするための改革が進む。

そのための最善策は、顧客の資産ポートフォリオの最適化だ。そのアドバイスがAIなどに置き換われば、対面の営業員は果たして必要とされるのか。

なおこのインタビューでは、大和が金融の他社と組んで販売を計画する、ブロックチェーン技術を生かした商品についても話を聞いた。