社外取「欺瞞のバブル」9400人の全序列#21Photo by Masato Kato

「日本のコーポレートガバナンス(企業統治)は、決して欧米に劣っていない」。企業統治に関する著書を多数出版し、自身も複数の企業の社外取締役などを務める東京都立大学の松田千恵子教授は、なぜそのように考えるのか。特集『社外取「欺瞞のバブル」9400人の全序列』の#21では、同氏が考える「米企業ガバナンス最大の問題」、社外取の必須スキルや、見過ごされがちな監査役の役割などについて熱弁してもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

決して日本よりも欧米の方が
企業統治が進んでいるわけではない

――欧米に比べて、日本のコーポレートガバナンス(企業統治)はどれほど実効性を発揮できていると考えますか。

 日本の場合はメインバンク・ガバナンスが30年以上前までは主流でした。それが1990年代後半ごろから、エクイティガバナンスに移行しつつ今に至るわけです。では、十全に機能しているかというと、まだまだ道半ばではないでしょうか。故に2015年にコーポレートガバナンス・コード(CGC)も入り、その流れを後押ししている状況です。

 ただし、誤解が多いのですが、私は決して米国の企業統治の方が進んでいるとは思っていません。欧州が進んでいるかといえば、そうとも考えません。日本は遅れているとは、一概には言えないわけです。ガバナンスはその国の文化や歴史などに根差しているし、そうなっていなければ実効性が担保されません。

 日本はとかく「欧米に追い付かなきゃ」という発想になりがちですが、企業統治について、そうでないことは申し上げておきたいところです。CGCが意図しているのは、米国型のガバナンスですが、果たしてそうなっていいのかという論点もあります。米国にはCGCによって近づいたんでしょうが、それをもってガバナンスが進んだのかとか、グローバルスタンダードに近づいたのか、といった議論には意味がないと思います。

――日本の企業統治が米国型ガバナンスの方向に進む中で、問題点はあるのでしょうか。

 たくさんあると思います。まず、経営陣への監督機能がなければならないという意味で、確かに日本は遅れています。

 それが顕在的にあるという面では、米国は進んでいるように見えます。ただし、欧州からも散々批判されてきた「米国ガバナンス最大の問題」というものを知るべきだと思います。