金融DX大戦#14Photo by Toshiaki Usami

野村ホールディングスが2021年2月にリリースした金融情報アプリ「FINTOS!」が6月、Google Cloudカスタマーアワードを受賞した。国内証券最大手で対面営業に強い同社が、デジタル戦略をどのように取り入れて拡大するのか。特集『金融DX大戦』(全22回)の#14では、責任者の池田肇執行役員デジタル・カンパニー長に直撃した。(聞き手/ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

日本企業唯一のグーグルアワード受賞
金融大手が「アジャイル開発」する難しさ

――昨年2月にリリースされた投資情報アプリ「FINTOS!」が今年6月、Google Cloudのカスタマーアワードを受賞しました。

 この賞はグローバルで対象となるアプリが選ばれますが、今回は私たちが唯一、日本企業で受賞することができました。金融機関が運営するアプリは、高いセキュリティーが求められます。そのような制約の中、外部とのデータ連携を視野に入れた開発を行った点を評価していただきました。

――5月に他のアプリの発表記者会見を開いた際、池田さんは「既存の金融人材と非プロパーの人材が、時には失敗の経験も共有した」と話していました。アプリなどのアジャイル開発の手法では、時には失敗を経ることも必要ですか。

日本の大企業でもとりわけ金融機関では、人事評価が減点主義で失敗が許されにくい文化が根強く残る。これは、スマートフォンのアプリのように、短期間で開発サイクルを繰り返し、リリース後も事後的に修正を加えることが前提の「アジャイル開発」に似合わないとされる。

池田氏は、証券業界最大手の野村ホールディングス(HD)のデジタル戦略の責任者として、アジャイル型のアプリ開発をどのように実現したのか。そこには、失敗を最小化して次に生かすマネジメント手法が発揮されていた。

またインターネット証券の口座数が増え、金融サービス向けのデジタルツールが普及すると、対面型の営業員の仕事はどう変化するのか。個人営業部門のマーケティング担当も兼ねる池田氏が、その将来像を語った。