上司は「修羅場の差し入れ専門家」に
なるのも有効

 私は以前、夜中まで働くのが日常的な職場で仕事をしていました。

 当時の上司の中に、1~2カ月に1度くらい夜10時過ぎに電話をかけてきて、「おい、今、何人ぐらい残っている?」と聞いてくる人がいました。

「うちのチームでまだ5人残っています」みたいに話すと、たぶん本人は銀座あたりで会食があったのでしょう。高級すし店で弁当を人数分作ってもらって、職場に一度戻ってくるのです。それで私に、「ご苦労さま。これ、みんなに配っておいて」と手渡してすぐに帰宅する。

 よく考えてみればブラック上司でもあるのですが、私もなんだかほろっとしてしまったのを覚えています。それに私が、その弁当を持って部下の席に行って「これ、○○さんからの陣中見舞い」と言って手渡すと、逆に私が感謝されるし、その場で部下とのコミュニケーションも生まれます。

「身銭を切って贈り物」はコスパ抜群のビジネススキル!周りがやらない今こそ好機本連載の著者、鈴木貴博氏の近著『日本経済 復活の書 2040年、世界一になる未来を予言する』(PHPビジネス新書) 22年6月16日発売

 働き方改革重視の現代にどこまで通用させるべきかはわかりませんが、こういった修羅場での贈り物には人の心をつなげる魔法が宿るものです。

 私自身は贈り物が下手で、かつ人生を損得勘定で考えるのも好きではありません。ですが、自分の経験を振り返り結論をまとめると、贈り物というものは人間関係を深めるためには費用対効果がとても高いツールなのです。人間はやはり“生き物”で、本能的に物をくれる相手が好きになる遺伝子が組み込まれているというのが、間違いなく真理のようです。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)