前向きに生きることに疲れたら…禅僧が「夢や希望はなくていい」と語る理由「自分を大切にする」ことをやめる。「夢」や「希望」がなくても人は生きていける。人脈も友だちもいらない。死を乗り越えようとしなくていい。こうしたアドバイスは、私たちのこれまでのライフスタイルや価値観に激しい揺さぶりをかけてくる(写真はイメージです) Photo:PIXTA

おすすめポイント

 これほど人間の本音に向き合い、本質をあぶり出した本は珍しいのではないか。要約者は一気に本書『「前向きに生きる」ことに疲れたら読む本』にひきこまれた。

『「前向きに生きる」ことに疲れたら読む本』書影『「前向きに生きる」ことに疲れたら読む本』 南 直哉著 アスコム刊 1430円(税込)

 ポジティブシンキングが大切だ。人生の意味を考えよう――。こうしたメッセージが込められた自己啓発の本を読んでもしっくりこない。そんなときにぜひ本書を開いてほしい。

 著者の南直哉氏は、禅仏教の一つである曹洞宗で出家得度し、長年永平寺で修行生活をされてきた禅僧の方である。現在は、知る人ぞ知る日本屈指の霊場である、青森県下北半島の恐山にあるお寺で院代(住職代理)をされている。南氏は仏教の立場から、自分自身と非常に冷静に向き合っており、その姿勢に胸を打たれる。

「自分を大切にする」ことをやめる。「夢」や「希望」がなくても人は生きていける。人脈も友だちもいらない。死を乗り越えようとしなくていい。こうしたアドバイスは、私たちのこれまでのライフスタイルや価値観に激しい揺さぶりをかけてくる。そして私たちは、どうしようもない感情と折り合いをつける方法を学び、肩ひじ張らずに自然体で生きていくことの尊さを新たに見出すのだ。要約では38の秘訣のうち特に興味深かったトピックを紹介する。