『週刊ダイヤモンド』7月16日・23日合併号の第一特集は「ひとり終活大全」です。ずっと未婚、配偶者と死に別れ、子供は最初からいないか、成人して遠くに行ってしまった――。最後はみんな“おひとりさま”。高齢者世帯に関心の高い相続や葬儀、墓のことなどを総ざらい。万一の時に備えた終活の実際の手続き、専門家や法人に頼んだ場合にかかる費用や選び方、注意点なども網羅。最期まで上機嫌に過ごすための情報をお届けします。(ダイヤモンド編集部)

高齢おひとりさま740万人に急増
構成比は女性が65%を占める

 シニア生活文化研究所の小谷みどり代表理事は昨年、孤独死した人の自宅を特殊清掃する現場に立ち会った。

 故人は60代の女性で、若かりし頃はキャビンアテンダントとして働いていたが、精神のバランスを崩して退職後は、両親と共に暮らしてきた。

 数年前に父親が病死して以降は、認知症を患う母親と生活をしていたが、母親が脳梗塞を発症して入院したため、女性はひとり暮らしとなった。

 女性の遺体が自宅の居間で発見されたのは、母親が入院して2カ月後のこと。遺体は腐敗が進んでおり、傍らの机には、食べかけのレトルトご飯が置かれていた。

 認知症の母親は、いまだにひとり娘の死を理解できていない。持ち家や父親が残した資産もあるので、母子は生活保護などの行政支援を受けていなかった。

 隣家には親戚が住んでいたにもかかわらず、近所付き合いがなかったために、ひとり暮らしになった女性は孤立し、遺体が何週間も発見されないという結果を招いた。

 孤独死は中高年男性の問題という印象が強いが、友人ネットワークが十分でなければ、女性でも起こり得るという事例である。

 厚生労働省の国民生活基礎調査(2019年)によれば、65歳以上の者のみで構成されている高齢者世帯のうち、単独世帯は736万9000世帯になる。

 その構成比は男性が35%、女性が65%。男女別に年齢構成を見ると、85歳以上は男性が11.6%、女性は21.0%で、長生きの女性は必然的におひとりさま(独居高齢者)になることが多くなる(下図参照)。

 おひとりさまの理由は、生涯独身、離婚、死別など人それぞれだ。それらの要因を分析すれば、おひとりさまは今後ますます増えていくことが容易に想像できる。

 50歳時の未婚率は、15年の国勢調査で男性が23.4%、女性が14.1%。これまでの未婚化、晩婚化の流れが変わらなければ、30年には男性が28.0%、女性は18.5%に達すると予測されている。50歳代の未婚シングルは10年ほどで、おひとりさまの仲間入りとなる。

 今の高齢者はきょうだいのいる人が多いが、50~60代はひとりっ子も少なくない。家族や親族に頼れないおひとりさまが、急速に増えることになる。

 当然のことながら、婚姻件数も減少。1970年代前半は100万件を超えていたが、19年には約60万件に減っている。離婚件数も02年の約29万件から減ってはいるが、まだ21万件もある。

 死亡者数も増加傾向で、19年は138万人。40年には推計で168万人に及ぶとみられている。

「仲むつまじい夫婦ほど実は危ない」
おひとりさま「予備軍」は約700万人

 配偶者との死別も、おひとりさま急増の大きな要因だ。高齢者の核家族化が進み、子供がいても、そのままひとりで暮らす高齢者が多いからだ。

 国民生活基礎調査によれば、65歳以上の夫婦のみの世帯は693万世帯。「おひとりさま予備軍」ともいえる「おふたりさま」は、おひとりさまと同じくらいのボリュームがある。

 「高齢のご夫婦は、熟年離婚の危機にある人たちより、共通の趣味を持ち、むつまじく暮らしている人たちの方が実は危ない。どちらかが倒れると、生活が一変してしまうからです」と、前出の小谷氏は指摘する。

 小谷氏自身、11年に夫を突然亡くしている。講師をしている立教セカンドステージ大学の受講生を対象に、配偶者を亡くして独り身になった人たち約40人で「没イチの会」も結成して活動している。

 「夫婦のうちにやっておく終活があります。別々の趣味を持つ、フルでなくていいから仕事をする、同じ価値観を持つ人とつながりを持つなどして、それぞれの活動領域をつくっておくことです。特に、家のことを妻任せにしていた男性ほど、ひとりになると気力をなくして何もできなくなる」

 突然、連れ合いに先立たれ、これまでの日常が崩れる。一緒に死ぬことは普通はできないから、その日は必ずやって来る。多くの高齢者がひとりで生きることを余儀なくされ、「ひとり死」が当たり前の社会になる。

頼りたくない人のための
生前契約の手続きとコストを総まとめ

『週刊ダイヤモンド』7月16日・23日合併号の第一特集は「ひとり終活大全」です。未婚、離婚、死別…。おひとりさま予備軍が減ることはありません。「ひとり死」が当たり前の社会が目前に迫る中で、身寄りがない人、頼りたくない人は何をすればいいのでしょうか。

 特集では、おひとりさまが準備しておきたい手続きを徹底調査。生前や死後の支援を専門家に依頼するとどのくらいの費用がかかるのか、タイプ別の生前契約のオススメ判定表と共にお届けします。

 また、在宅看取りのカリスマ医師が、おひとりさまが在宅看取りをするときのコストやポイントを解説。この他にも、お金がない人でも安心できる、自治体の終活サービスや、保険や銀行、不動産、相続など夫婦が元気なうちにやっておくべき準備をまとめました。

 さらに、ひとり死の急増で、葬儀・墓事情も激変しました。今や新しく購入したお墓の種類は樹木葬が約4割を超え、昔ながらの一般墓を上回っています。散骨や合祀墓、樹木葬や納骨堂などおひとりさまに適した墓のポイントや、墓じまいの上手なやり方を徹底解説。また、年間3000件を占める、解剖学の教育・研究に使われる大学への献体をおひとりさまが希望する理由や、海洋散骨の業者選びのポイントを解き明かします

 加えて、『おひとりさまの老後』『在宅ひとり死のススメ』の著者の上野千鶴子氏を直撃。「在宅おひとりさまで機嫌よく死にたい」と語る上野氏に、今どんな備えをしているか明かしてもらいました。

 身寄りがない、頼りたくない人が、最期までご機嫌に過ごすための情報が詰まった一冊です。ぜひご一読ください。