温厚で感情を顔に表すことが少ない岸田首相とは対照的に、野党や反対勢力に対する厳しい批判を繰り返した安倍氏の姿勢やその実績には毀誉褒貶があるのも事実だ。しかし、国柄を考える大切な機会を人々に与えてくれたのは功績といえるだろう。

 安倍氏は、初当選同期である岸田氏との関係について「一番の男前は岸田文雄、一番人柄が良いのは安倍晋三だった」と笑いを誘ったことがある。存命であれば、その人柄によって今後どのような「美しい国づくり」を進めていたのか、もっと長く見てみたかった。

 私は、安倍氏の妻・昭恵さんからこんなエピソードを聞いたことがある。

「(安倍氏は)トランプ大統領と仲が良くてうらやましいと世界中から言われていたけれど、トランプさんは誰でもフレンドリーになれるわけではなく、(安倍氏は)仲良くするための努力を相当していた」という。ドナルド・トランプ前米大統領だけだけではない。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領など、世界中のリーダーと親しい人間関係を持てたのは、安倍氏の懸命な努力の賜物であろう。

 努力によって人は強くなれる。努力によって大きな失敗でも取り戻せる。努力によって世界中の人々から尊敬を集めることができる。

 私は、安倍晋三さんの人生から、学ぶことがまだまだたくさんありそうだ。