2022年入試で注目された近畿大学の新設「情報学部」。入試倍率も10.7倍と一躍、人気学部に躍り出た。学部長は“プレステの父”といわれる久夛良木健氏。特集『大学2022 劇変の序列・入試・就職』(全24回)の#10では、自らゼミで教壇に立つ久夛良木氏に、近畿大学情報学部の戦略を聞いた。また、世界の大学と比べて日本の大学と大学生に何が足りないのか、「歯車」のデジタル人材から脱却するためには何が必要なのかも明かしてもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 山出暁子)
日本のデジタル人材不足は「歯車」的な意味合い
「未来をつくる人」の議論が必要
――近畿大学の情報学部は「AI活用やデータ分析、サイバーセキュリティ対策などを扱う、クリエイティブな先端IT人材の育成を目指す」と掲げられていますが、そもそも、日本のIT人材不足の深刻さをどう見ていますか。
今、日本では「デジタル人材」というのが定義されていなくて、日本でよくいわれているデジタル人材不足は、基本的には「歯車」的な意味合いが強いんですよね。
デジタル人材不足で「新しい未来をつくる人がたくさん必要」というよりは、「その歯車的な役割の人が足りなくなる」と言っている。ITは研修などで習得するんだけども、それはパーツとしての技術であって「WHAT」のところではなく「HOW」の技術です。
でも大事なのは「何をやるか」、つまり「WHAT」の部分です。それが企業でいえば事業戦略になるし、未来戦略になる。そこが日本には足りていないですね。
あとは、世界を見たときに、テクノロジーはどんどんみんな共有できるようになっていて、ベストプラクティスもそれができる。世界にいる新しい未来をつくっていこうとしている人たちは、会社とカ国とか、そういう枠組みを離れて自由にコラボレーションして次のチャレンジをしていますよね。日本はそれもできていない。
――教育にも同じことを感じますか。
そうです。
日本の大学や大学生に世界の大学と比べて、圧倒的に足りないものは何か。そこに、プレステの父、久夛良木氏が近大からの誘いに「やらなくちゃいけない」と強く思った理由がある。久夛良木ゼミの中身や、情報学部が目指す道筋と併せて、はっきりと語ってもらった。