――具体的にはどのような職場環境をつくられたのでしょうか?
古澤 まずは職人を社員として雇い続けるようにしています。新人職人には先輩職人が「バディー」となりマンツーマンで指導します。そうしてスキルの高い職人に育てば、会社にとっても雇い続けるメリットがあります。
――若い人は安心して入社できますね。
古澤 加えて、仕事の工程管理もきめ細かく行うようにしています。当時、足場の業界では1カ月単位で仕事を管理することが一般的だったのですが、そうすると2カ月先、3カ月先の仕事の管理が行き届かず、職人が残業して割を食うことが少なくなかったのです。それを防ぐために、3カ月先まで工程を管理して、仕事量をコントロールするようにしました。さらに、受注量を減らしたり、一つの案件に携わる人員を増やしたりした結果、残業は大幅に減りました。
――福利厚生の面はいかがですか?
古澤 コロナ禍前までは、夏祭りや社員旅行など家族ぐるみで楽しめるイベントを行っていました。夏祭りでは社員が家族のために肉や焼きそばを焼き、ヨーヨーすくいやストラックアウトのような催しものを企画。相撲部屋の親方に来てもらい、ちゃんこ鍋を振る舞っていただいたこともありました。社員旅行は年1回、北海道や沖縄などに出かけています。
普段は、子連れ出勤をOKにしています。キッズスペースがあり、そこで子どもは自由に遊んでいられます。社員の家族同士がイベントで仲よくなっていますし、子どもが職場を見学する「こども参観日」イベントも行っているので、職場に子どもがいても違和感がないのです。コロナ禍になり学校や保育園が休みになったときには、特に重宝されました。
――「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で審査委員会特別賞に選ばれたのは、そうした経営が評価されたのですね。
●向陽信和株式会社 事業内容/建設業、従業員数/61人、売上高/6億1914万円(2021年8月決算)、所在地/岐阜県土岐市泉町久尻2431-17、電話/0572-55-6771、URL/kouyoukun.co.jp
古澤 もっとよい会社がたくさんあるのに、恐れ多いです。この賞を頂けたのは、かねて付き合いのあった東濃信用金庫さんが推薦してくれたことがきっかけです。またこの賞が縁で、賞の発起人で企業研究の第一人者・坂本光司先生の勉強会に参加するようになりました。先生との出会いを機に、業界全体を変えていくという考えが芽生え、建築関連の勉強会でいろいろ意見を述べています。
――今後の抱負をお聞かせください。
古澤 足場架け払いに加えて、足場資材のレンタル事業をまもなく開始します。岐阜県の東部には資材レンタルの会社がないので、最新の足場機材をきちんと整備した状態で提供する事業を自分たちで始めることにしたのです。2000万円以上する大型の整備機を購入するために、ものづくり補助金を活用したのですが、東濃信金さんにコンサルタントの先生をご紹介いただいたおかげで、スムーズに申請できました。新しい2本目の柱を太くしていき、ますます事業を安定させたいと考えています。
(取材・文/杉山直隆、「しんきん経営情報」2022年8月号掲載、協力/東濃信用金庫)