スンナ派とシーア派の争いはあるのか?

 では、「お隠れ」になった12代のイマームが出現するまで、誰が世界のリーダーになるのか。

 徳を積んだそのお坊さんが代理となります。

 今でもイランの大統領の上には、ハーメネイー師がいます。

 イスラーム教と無縁な人には、不思議な政体に見えるかもしれません。

 しかしイランの人々にとっては少しもおかしくはないのです。

 シーア派の教義どおりで彼らはイスラーム教を、そのように信仰しているのですから。

 スンナ派とシーア派の争いは、誰を現世のリーダーと考えるのか、多数に選ばれたカリフなのか、フサインの血を引くイマームなのか。それが原因であってイスラーム教の教義に関わる争いではありません。

「スンナ派とシーア派の争い」という言葉が、よくジャーナリズムには登場します。

 しかしそのほとんどの事例をよく見ると、その原因となる部分に、西欧列強が石油資源などの利権を得て、それを守るために起こした政争が内在していると思われます。

 シーア派とスンナ派が、教義の相違を理由として起こした宗教戦争は、歴史的には存在しなかった、といっても決して過言ではないでしょう。

『哲学と宗教全史』では、哲学者、宗教家が熱く生きた3000年を、出没年付きカラー人物相関図・系図で紹介しました。

 僕は系図が大好きなので、「対立」「友人」などの人間関係マップも盛り込んでみたのでぜひご覧いただけたらと思います。

(本原稿は、13万部突破のロングセラー、出口治明著『哲学と宗教全史』からの抜粋です)