防衛産業で企業の撤退が相次ぐ「悪循環」を断ち切るには、企業が産業としての競争力を付ける必要がある。冷戦終結後、米欧では防衛産業の統合が進んで巨大企業が相次ぎ誕生した。だが日本では集約が進まず、防衛産業は風前のともしびだ。果たして活路はあるのか。特集『軍事ビジネス&自衛隊 10兆円争奪戦』(全25回)の#21では、日本の防衛産業を立て直すための処方箋を提示する。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
崩壊寸前の防衛産業の生産基盤
立て直しのラストチャンス
「防衛産業を強くするために、企業再編を本気で考えていかなければいけない」――。防衛産業の未来の姿について、自民党のある防衛族議員はそう断言する。
この背景にあるのは、日本の防衛産業に対する強烈な危機感だ。
三菱重工業や川崎重工業など、防衛省と直接取引する「プライム企業」を頂点とする防衛サプライチェーンピラミッドは、相次ぐ企業撤退で崩壊寸前の状況に陥っている。
国内防衛産業の生産基盤を失うことは、自衛隊の装備調達を海外に依存することになる。さらに、軍事技術と民生技術の境目がなくなる中で、先端技術の開発基盤も喪失することになる。
つまり、防衛産業の競争力がなくなることは日本の国力低下に直結するということだ。もはや猶予はなく、日本が強みを持つ技術や製品を中核にして、防衛産業の立て直しに動くべきだろう。
ジリ貧の防衛産業を再生するための“処方箋”とは何か。次ページでは、三菱重工、川崎重工、SUBARUなどの防衛企業を巻き込んだ「巨大再編シナリオ」を提示する。