軍事ビジネス&自衛隊 10兆円争奪戦#11Photo:123RF

自民党が防衛予算を10兆円へ倍増する方針を示した。降って沸いたチャンスを前に陸海空の自衛隊や軍事関連企業は早くもそろばんをはじき、「バブル予算争奪戦」の様相を呈している。勃発リスクが高まっている台湾有事に必要な戦い方と装備は何か。国内防衛産業のジリ貧を食い止めるには、どんな施策に金を投じればいいのか。特集『軍事ビジネス&自衛隊 10兆円争奪戦』(全25回)の#7では、防衛予算のあるべき使い道について検証すると共に、予算特需で潤う「20社リスト」と防衛力強化に欠かせない「10社リスト」を大公開する。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

「バブル予算10兆円」争奪戦のゴング
そろばんはじく自衛隊と日米の軍事産業

 8月4日、防衛省は2023年度予算の概算要求の金額を5.5兆円程度にする考えを示した。概算要求の金額としては過去最大の規模となる。

 これとは別に、防衛力の強化に必要な取り組みとして、予算額を外部に明示しない「事項要求」で盛り込むことを検討している。財務省関係者によれば「年末に決定する最終的な防衛関係費は、前年度より約1兆円が積み増されるのではないか」としている。22年度の防衛関係費は5.2兆円(米軍再編関係費等を除く)なので、6.2兆円程度に落ち着くという見立てだ。

 日本の安全保障環境が厳しさを増していることから、自民党は防衛関係費を中長期的に10兆円規模へ倍増させる方針を掲げている。

 降って沸いた防衛特需に、陸海空の自衛隊や軍事関連企業は早くもそろばんをはじいている。また、ある自衛隊幹部は「米国の軍需産業が日本にどんな装備を売り付けようかと、手ぐすねを引いて待っている」と打ち明ける。

 そして、予算激変の動きは政治のパワーシフトと連動している。防衛力強化を主導していた安倍晋三元首相が逝去したことで、日本の安全保障戦略をリードするのは誰なのか、権力シフトが起こりつつある。とにかくも、日本の国防を巡り“権力とカネ”がうごめいていることだけは確かだ。

 バブル予算の使い道を検証する前に、まずは基本を押さえておこう。一般的に防衛予算と言えば、戦車や戦闘機といった大型装備を思い浮かべる人が多いかもしれない。

 だが実は、22年度の防衛関係費のうち42%は人件・糧食費で占められている。約23万人いる自衛隊員の給与や退職金、(基地など)営内での食事に巨費が投じられている。

 それ比べて、装備品購入費は人件・糧食費の半分未満の16%に抑えられている。将来の装備品開発につながる先端技術への投資は3%に過ぎない。

 それでは、政府は増やす防衛予算を何に投じようとしているのか。次ページでは、防衛予算10兆円のあるべき使い道を検証すると共に、予算特需で潤う「20社リスト」と防衛力強化に欠かせない「10社リスト」を大公開する。