方向よりも量を重視した
新しい景気動向指数
7月19日に景気動向指数研究会が開催され、すでに暫定的に設定されていた2018年10月の景気の山と20年5月の景気の谷が確定した。また同会では同時に、景気を把握する新しい指数の検討状況について報告された。
新しい指数作成の基本方針は以下に示した通りだが、これまでの方針を大きく変えたのが一番目だ。景気動向指数は、もともと景気の方向の変化をタイムリーに捉えることを目的にしており、共通的な変動を抽出して採用系列を決めてきた。そして、上向きになっている指標の割合(DI:ディフュージョン・インデックス)を算出することで景気の波及度(広がり)を測定し、回復・後退という景気の方向を把握してきた。
量の概念を示すものとして、DIと同じ採用系列を用いてCI(コンポジット・インデックス)も算出されていた。ただ、CIは経済の総体的な量(総体量)そのものを把握することを目的としたものではなく、採用系列の変化の大きさを合成することによって、景況の量的変化をイメージできるようにしたものだ。
1.共通的な変動を抽出するのではなく、経済の総体的な量(総体量)の変動を反映できるものとする。採用指標が同じような動きをすることは必ずしも必要な条件としない。
2.総体量としては、生産→分配→支出(→生産→…)というマクロ経済の波及(いわゆる好循環が回っているか)を念頭に置き、生産(供給)、分配(所得)、支出(需要)の三面それぞれから捉える。
3.市場経済の下での自律的な動きに焦点を当てるため、政府活動や帰属家賃等を含むGDPそのものを捉えるのではなく、きめ細かな指標構成とする。
特に支出面においては、(1)景気対策としても政府支出、(2)在庫の増減、(3)輸入(控除項目)は、全体の変動を打ち消すバッファーとなるため、むしろそれらを除いた国内民間最終需要や輸出といった項目を中心に考える。
4.デカップリングが生じやすい財とサービスについては、両者がバランスよく含まれるようにする
(出所)第21回景気動向指数研究会資料より作成
今回の見直しでは、景気の方向を把握するというこれまでの考え方を転換し、総体量を把握できる指数を作成することが優先された。採用指標が同じような動きをすることが必要条件から外され、採用される系列の数が拡大した。また。動きが乖離しやすい財とサービスについては、両者がバランスよく含まれるようにされた。