「自主再建」の看板を下ろし、6月末に公的支援の下で資金調達を行なった日本航空。第1四半期の営業成績はどん底で、630億円という大幅赤字予想すら達成が厳しい事態に陥っている。前回は、風前の灯となっている「企業年金制度改定」の実態を明らかにし、国が主導する再建シナリオの行方を占った。今回は、主に赤字を繰り返す企業構造の深層に潜む問題点を、明らかにする(取材・文/『週刊ダイヤモンド』編集部 臼井 真粧美)
ANAとの合弁会社が
“離婚”に至った理由
売上高規模こそANAよりも大きいJALだが、株式時価総額、財務力はANAに劣る。ANAは7月、“自力”で1400億円規模の公募増資を実施する。なぜこんなにも力の差がついたのか。
JALと日本エアシステム(JAS)が統合を決めた01年、ANAは経営陣と社員が危機感を共有し、大規模なリストラを断行した。賃金や乗務手当はカット。パイロットにも聖域を設けずに乗務時間を増やし、1人当たりの生産性を向上させた。
国際線の拡大方針も転換して路線を大リストラし、「収入」から「利益」重視の経営へ舵を切った。不採算路線は加盟しているスターアライアンスの下で他社便を利用した共同運航へ切り替えた。
一方JALは、統合で規模こそ拡大したが、8つの労働組合を抱えて労使が対立し、合理化は進まなかった。
こうして両社の競争力の差は広がっていくことになるが、じつはJALにはその現実を直視する機会があった。05年、中部国際空港が開港されたときに行なわれたJALとANAの合弁事業である。
航空機の誘導や荷物搭載などの地上支援業務を行なうために、合弁会社「中部スカイサポート」を設立したのだが、07年に“協議離婚”に終わり、ANAは別会社を設立した。現場の仕組みがあまりに異なっていたのだ。