売りやすい商品を扱うと
営業力は低下するのか?
保険はモノではなくヒトで選ばれる
お客さまが保険の加入を検討する際は、モノではなくヒトで選ぶといわれる。多くの場合はすでに保険に加入しているが、お客さまと取り扱い募集人との関係の強さを確認する簡単な質問がある。それは「どちらで保険に加入されていますか?」という質問だ。
保険会社名よりも前に募集人の名前や代理店名が出てくる場合は、募集人との関係が強いといえる。逆に、保険会社名が出てきた場合は募集人というよりも、商品の良さや保険料の安さを重視するタイプといえる。
消費者からすると保険という目に見えない商品を購入する際は、最後は人によるところが大きい。保険会社の財務基盤や格付けも大切であるが、お客さまが保険へ加入する契機となるのは接する募集人の信用力が多くを占めるのである。
ところが、募集人に教育する立場からすると、この数年はヒトを育成するよりもモノを伝えていくことに軸足が移っていると感じている。
各保険会社の営業本部では、月末近くになると挙績達成率が低迷している支社へ追い込みをかけていく。「なぜ達成率が芳しくないのか?」とヒアリングすると、「当社とA社の商品を比べられて優位性がなく……」といった具合である。自社の商品が劣勢であることを言い訳にするのだ。
筆者も4社の保険会社を渡り歩いてきたが、他社を凌駕(りょうが)する商品を扱っているときは誰でも売れるため、営業力は低下していく。逆に、劣後した商品を扱っているときこそ真の営業力が試されるともいえる。
鶏が先か卵が先かではないが、保険セールスの教育は大きく二つに分類できる。お客さまに保険に加入する目的をニード喚起し、今の加入契約に疑問を持たせるまでの部分。そして、保険への加入意思を示したお客さまへ各社の商品を並べて選定していただく部分の二つである。
保険代理店の募集人にヒアリングすると、保険会社の研修といえば商品の研修という印象が強いという。顧客本位を考慮すると、今こそ募集人に提供すべき教育は前者のタイプである。今回は、顧客本位の募集人を育成するための教育についてお伝えしていこう。