修繕工事を適切に行うための
仕組みを作るべきだ

 前述のように、輪番制の理事会の場合、理事のメンバー次第で、どうしても理事会の意識の差が生まれてしまう。そこで、どんなメンバーが理事になったとしても、理事会としての姿勢がぶれないようにすればいい。

 具体的には、修繕工事について一定のルールを作るという方法が考えられる。数千~数万円程度の修繕工事ならそこまで神経質になることはないが、数十万円、あるいは数百万円の費用がかかるような規模の修繕工事で、緊急性を伴わないものについては、ルールに基づいて対応するのだ。

 できれば、修繕委員会などの専門委員会の下部組織として諮問委員会を常設し、一定レベル以上の修繕工事については、諮問委員会にはかる形で、相見積もりを取ることを徹底することが望ましい。もし、そのような委員会を組織できない管理組合の場合は、相見積もりの取り方をマニュアル化しておく。とにかく、それぞれのマンションに合う形で、修繕工事の実施に関する仕組み作りをすることが大切だ。

 この仕組み作りにあたっては、管理会社にも協力してもらうといいだろう。「仕組みができれば、管理会社の見積もりを採用しない可能性が高くなるのに、そんなことを管理会社に頼めるのだろうか」と思われるかもしれないが、実は、管理会社は管理組合から頼まれたらイヤとはいえないのだ。

 マンションの資産価値を守り、快適な住環境が確保できることを目的に定められた「マンション管理適正化法」には、管理事務を次のように定義している。

(マンション管理適正化法第2条6から)
管理事務 マンションの管理に関する事務であって、基幹事務(管理組合の会計の収入及び支出の調定及び出納並びにマンション(専有部分を除く。)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整を言う。)を含むものをいう。

 つまり、管理会社が受託する基幹業務のうち、「会計」「出納」業務に並ぶ三つ目の業務として「マンションの維持と修繕」に関するもののお世話をすることを、法律が明確に規定しているのだ。したがって、管理会社には遠慮することなく、修繕工事の相見積もりを取る際にもしっかり働いてもらえばよい。

 ただし、管理会社に「この修繕工事について、3社から見積もりを取ってください」と単純に頼むだけではまったく意味はない。そういう依頼の仕方では、管理会社にとって都合のよい業者から、高値で見積もった見積書しか出てこない可能性があるからだ。

 最も重要なのは、管理組合が独自に調べて、管理会社とは関係のない独立した業者から見積もりを取ることである。業者を探す方法は、理事や区分所有者からの紹介があればベターだが、ネットで検索してよさそうと思った業者を選ぶというレベルで十分だ。大手である必要はなく、マンションの近所で営業している小さな会社でも問題はない。

 ポイントは、見積もりを取る業者選定を管理会社任せにせず、理事や諮問委員会の委員などが自分たちで探すことだ。もし、先に管理会社が提案してきた見積もりがあれば、それを業者に見せてもいいだろう。同じ工事内容で見積もってもらえれば、比較しやすくなる。