台湾市民の日常生活は、変わらずいつも通り

 一方で、ペロシ議長を迎える台湾側はちょっとしたお祭りムードだった。ネットには市民がペロシ議長の搭乗機が松山空港に到着する様子を捉えた動画や写真、空港で撮った記念写真などがアップされ、「街は歓迎でお祭り騒ぎになっている」という証言も。市内のランドマーク「台北101ビル」には、歓迎のイルミネーションも流れた。

台湾・松山空港で、ペロシ議長が乗った特別機を歓迎する人々。歓声が上がっている

 筆者の台湾在住の友人たちも、その日常生活にはこれといって変化は見られず、「いつも通りの一日」を過ごしていたと話している。これまでにも台湾は事あるごとに、中国の「演習」にさらされてきており、今回の演習にも「もう慣れちゃった」という言葉も聞かれた。

中国が軍事行動を起こしたのは、ペロシ議長が女だから?

 もう一つ見逃してはならないのが、ペロシ議長本人の発言だ。台北で蔡英文総統と会見した後、彼女はこう述べた。

「今年4月から[米国会議員の]リンゼー・グラムやロバート・メネンデス、リチャード・バー、ベン・サス、ロブ・ポートマン、ロニー・ジャクソンらが台湾を訪れてるけど、中国はなにも言わなかった。彼らが男性だったから。」

 リンク先の映像では、横にいる蔡総統も思わず笑っている。日本を含め、多くのメディアがこの言葉をスルーしてしまっているが、これはなかなか的を射た発言だと筆者は思う。実際に中国における数々のケースにおける女性の扱われ方を知っている人であれば、中国が「相手は女だ。ビビらせればいいさ」と考えていた節があるのは、あながちペロシ議長の思い過ごしではないといえる。蔡総統が笑ったのも、女性総統として身に覚えがあったからだろう。

 実は、ペロシ議長訪台後の15日にも米国の男性議員たちが訪台した。中国は「演習再開」を宣言したものの、その激しさはペロシ議長離台後のそれに比べるべくもないほど「おとなしい」ものだった。