「触る」ことで、体験が「自分ごと」になる

――ソフトロボットを作って自分の体に「生やす」というワークショップはとてもユニークですね。参加者の反応はいかがですか。

ソン 面白いのは、「触る」「作る」ことがスイッチになって、意識が変わることです。分身ロボットをデザインするワークショップでも、スケッチをしているときは開発者目線でアイデアを出していた人が、粘土でプロトタイプを作って自分の体に乗せた途端、すごくパーソナルな「自分ごと」を話しだすんですよ。それまでは「家族」とか「友人」と呼んでいた対象が、いきなり「お母さん」とか「○○ちゃん」になる。

作って、触って、感じて――ソフトロボットから考える未来のインターフェースPhoto by ASAMI MAKURA

上岡 「自分ごと化」されるのはすごく重要ですよね。体験のナラティブが得られるということですから。

ソン アイデア段階の空想を、モノとして形にすると、必ずギャップが出てきます。大事なのは、そこでちゃんと方向転換すること。「家族なら、全身どこから生えてきても許せる」って思ってた人も、実際に生やしてみると「やっぱり嫌だなあ」と思ったり(笑)。その感覚が大事なんですよね。

――実際に情報機器が体から生えてきたら、困ったことも起きそうですね。

ソン 商品化するとなれば、生活にどんなふうに影響を与えるか、プライバシーをどう守るか、操作の主導権は誰が持つかなど、論点はたくさんあります。ロボットが勝手に出てこようとしても、プシュッと押し込んだら消えるとか、「今いい?」みたいなシグナルをさりげなく送れるとか。ワークショップの参加者の肌感覚も含めて、インタラクションデザインの指針についてはこれからも考えていかないといけませんね。