情緒を刺激する、ソフトロボット的なデザイン思考

橋田 私の研究室でソンさんにパウチモーターのワークショップをしてもらったときは、学生さんの意外なパーソナリティーが出てきてびっくりしました。手を動かしながらトライ&エラーをするから、成果物はもちろん、プロセスにも個性が出ますよね。

――デザイン思考では、レゴで何かを組み立てるようなワークショップもありますが、それともちょっと感覚が違いますか。

橋田 レゴは動かないけど、ソフトロボットは動くから。

上岡 動くことで、情緒が一気に刺激されるんですよね。

橋田 そうそう。最近では、ロゴにもモーションを加える例が増えていると聞きました。アイデンティティーを表現するにも、言葉と形だけでは足りなくて、時間軸が必要になっているのかもしれませんね。

上岡 画面の中だけじゃなくて、ロボットとして動くとなおさらですよね。コロナ禍でリアルな場面で人との接触が大きく制限されたからこそ、目の前で動いているものの触覚を自分にフィードバックさせることの価値が高まっていると思います。

――これまで「体験価値のデザイン」というと、「モノ」と「サービス」という別々のものをデザインで融合させよう、という発想になりがちでしたが、ソフトロボットでは両者がそもそも融合していますよね。

ソン ソフトロボットには、ディスプレーにはない柔軟な形状があり、身体性を有するメディアとして人間の生活に溶け込みやすい。そこに、未来のインターフェースとしての大きな可能性があると思います。モノと人の新しい関係や、人々のコミュニケーションの在り方を探究していく際に、モノの存在やコトの動きを体感しながら検討していくべきだと思います。

 デザイン思考では、アイデアをたくさん出して、そこから絞っていくという「発散と収束」のプロセスを繰り返します。ソフトロボットのワークショップでいうと、「発散」は多様性を包摂する方向に空想を思いっ切り広げること、「収束」は実際にモノに触れて現実的な設計指針や許容範囲を見極めることに当たります。私はここで「自ら手を動かして制作検証する身体的な体験価値」がとても大事だと思っています。ぜひ多くの人に柔らかい分身ロボットを作るワークショップを体験していただきたいですね。

【お知らせ】10/6(木)、10/13(木)CHORDxxCODE ワークショップ「柔らかい分身ロボットがつくり出す『そこにいる感』のコミュニケーションデザイン」開催!(詳細は こちら から)