メンバーを選ぶときは色々な意見が出てきますね。「技術は高いけれども、今週は遅刻が目立った」「試合と違って、練習に気持ちが入っていない」など、選手だからこその意見も出てくるんです。キャプテンらの主張は大したもの。ですが、監督やコーチは違った角度で物事を見るようにアドバイスします。そうすることで、自分以外のことを真剣に考え、そういった機会が連鎖していくことを願っているのです。

トップダウンの経験が
導き出したハイブリッド的思考

古橋亨梧らプロ選手を10年間で30人以上輩出、興國高校サッカー部の育成メソッド

 一方で、「トップダウン」も採用もしています。私は初芝橋本高校のサッカー部に所属していました。そのときの原体験は、完全なるトップダウンの文化。20年前の当時は、そう珍しくはなかったと思います。

 特に強烈に印象に残っているのは、勝利に対する執着心を教えてもらったこと。試合に勝つために何をすべきか、徹底的にマンマークで守備をして失点機会を減らす。また、攻撃時のセットプレーでは複数のプランが用意されており、選手らはそれを実行。ただ、ひたすら用意されたプランを繰り返すのです。

 そこには、自分の判断することや、サッカーを楽しむという余裕はなかったですね。勝利することだけを目標に戦っていました。戦術遂行を可能とする、高い身体能力のある選手が多く揃っていましたから。

 そういった原体験を振り返ると、トップダウンは意外と悪くない。トップダウンが持ち合わせているポジティブな部分もあるんですね。集団や組織をひとつの方向に向けるのは、トップダウンが強いし、早い。高校サッカーは特にそう。