今、様々な地域から興國高校に生徒が集まって来ています。それぞれ、自分の技術に自信を持っていますし、それまでの指導者をリスペクトしている部分があります。だからこそ、彼らの知見を一旦、リセットしてもらう必要があるんです。

 フレッシュな状態で、興國のメソッドを吸収してもらう。短期間で高校生の能力を伸ばすためには、トップダウンなしでは難しいのではと思います。100人を超える選手それぞれをボトムアップで成長させるには、3年間は短すぎるんです。

 ただ、トップダウンにも限界があります。トップダウンはリーダーが持ち合わせている知見を落とし込むもの。有限です。そのため、選手が興國のメソッドを吸収し、自走し始めたら、その先はボトムアップがいいんです。私とは違った視点を持つ選手からの意見は貴重で、ディスカッションしながら、新たなメソッドが生まれることもあるんです。

トップダウン×ボトムアップの
「型破り」な融合型戦術

 興國高校では、トップダウンで監督から選手へメソッドを落とし込み、選手がそれを理解し、実践できるようになったらボトムアップに転換していく。3年間かけてこれらを融合することで、型破りを身につけることができ、その型破りを持ち合わせていることで、あらゆる対戦相手や状況に対応しやすくなるんです。

 ただ、難しいことも多いですね。日々、葛藤です。往々にしてトップダウン過ぎるのではないかと、毎日反省します。同じことを言っても、その言葉に傷つく人もいますし、そうでない人も。正解・不正解は受け手によって異なるんです。ですので、選手個々のトップダウン・ボトムアップが必要になりますね。ハイブリッド型がいいと思っていますが、まだ道半ばです。

内野智章(うちの・ともあき)/興國高校サッカー部監督。小学校3年のとき、地元の白鷺サッカー少年団でサッカーを始める。高校1年時に全国高校サッカー選手権大会に出場し、ベスト4進出。高校卒業後、高知大学へ進学。卒業後、愛媛FC(当時JFL)に入団。2006年より興國高校の体育教師、及びサッカー部監督に就任、これまでに30人以上のプロサッカー選手を輩出

*「内野智章・興國高校サッカー部監督に聞く(2)」に続きます。